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会 場 江東区医師会館 4階講堂
江東区東陽5-31-18 (江東区役所向側)
TEL:3649-1411 (月)~(金)9:00~17:00

地図はこちら
申 込 電話で江東区医師会事務局へお申し込み下さい。
受付開始 5月16日(火)より
定員:100名

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区民公開講座 平成28年10月8日のまとめ
小児泌尿器疾患:最近の治療方針2016
慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室
  浅沼 宏
はじめに
 小児泌尿器科疾患のうち日常の臨床で診療頻度の高い「停留精巣/移動性精巣」、「包茎」、「夜尿症」と救急疾患である「急性陰嚢症」に関して最近の治療方針を概説する。なお、「停留精巣/移動性精巣」、「夜尿症」、「急性陰嚢症」については国内からも診療ガイドラインが刊行されているので参照されたい1-3)

I. 停留精巣/移動性精巣 1,4)
1) 精巣下降・病態
 胎生初期に第2腰椎の高さで発生・分化した精巣は、妊娠後半になると精巣導帯、アンドロゲン、腹腔内圧の作用によって腹膜に沿って下降し、鼠径管を経て陰嚢内に到達する。停留精巣とは、精巣が本来の下降経路の途中で停滞し、陰嚢底部に到達していない状態をいう。その発生頻度は新生児期で約3%、1歳時で約1%とされ、低出生体重児や早期産児では高頻度となる。
 出生時の停留精巣は自然下降が期待され、その多くは生後3〜4ヵ月、遅くとも6ヵ月までには完了する。一方、停留精巣を治療せずに放置した場合には不妊症、悪性腫瘍、鼠径ヘルニア、精巣捻転、身体的・精神的トラウマなどの問題が生じる。未治療の場合は年齢とともに精巣の組織障害が進行し、2歳以降には対側の陰嚢内精巣にも組織学的変化が出現する可能性がある。また、停留精巣の悪性腫瘍発生の相対的リスクは約5倍とされる。

2) 診断・分類
 診断には触診所見が最も重要で、精巣が鼠径部から陰嚢上部に触知可能な「触知停留精巣」と、触知不能な「非触知停留精巣」に分類される。非触知精巣は停留精巣の約20%を占め、腹腔内精巣や胎生期の血流障害に伴う消失精巣が含まれる。腹腔内精巣の確定診断には腹腔鏡検査が最も有用である。
 精巣挙筋の過剰反射と精巣導帯の陰嚢底部への固定不良で生じる移動性精巣は、精巣を用手的に陰嚢底部に下ろすことが可能で、手を離してもしばらく陰嚢内に留まる。通常は治療の適応とはならないが、後に挙上精巣となり精巣固定術が必要となる症例があるため定期的な経過観察が重要である。

3) 治療・予後
 治療としては、一部の停留精巣にはホルモン療法も有効とされるが、生後6ヵ月〜1歳6ヵ月程度までに精巣固定術を行うことが薦められている。早期の治療により精液所見や妊孕能が改善し、悪性化のリスクが軽減できる。また、精巣を陰嚢内に存在させることにより、悪性化した場合にもその診断・治療の遅延が回避できる。
 精巣固定術は、触知停留精巣では約2cmの鼠径部切開法で行う。鼠径管を開放し精巣を同定、鞘状突起を結紮した後に精巣動静脈と精管を外側精索筋膜を切開しながら後腹膜腔へと十分に剥離する。精巣は陰嚢皮膚と肉様膜の間に形成したダルトスパウチ内に縫合固定する。非触知精巣に関しては、消失精巣に伴うnubbin(遺残組織)は将来の悪性化の可能性を考慮して切除する。腹腔内精巣では精巣血管が短く精巣が陰嚢内まで届かない場合が少なくない。このような症例では、精巣血管をあえて結紮切離し、6ヵ月程度精管周囲の側副血行路の発達を待ってから精巣を陰嚢内に固定するFowler-Stephens手術が行われる。近年、このFowler-Stephens手術は腹腔鏡を用いて行われ、良好な治療成績が示されている。
 片側停留精巣では、精巣固定術後約70%で精液所見が正常であり、約90%で父性獲得が可能とされる。一方、両側例では術後正常の精液所見は約30%であり、父性獲得も65%程度とされている。

II. 包茎 5)
1) 自然史・包皮の役割
 出生時、亀頭は包皮で完全に覆われ、亀頭と包皮の癒着が高頻度であるため包皮翻転は困難である。乳児期から幼児期にかけて、亀頭表面と包皮内板の間に表皮の落屑が生じ(落屑表皮が堆積して白色の小塊となったものが恥垢)、間欠的な勃起が起こることにより次第に両者の癒着が剥がれ、3〜4歳ころまでには亀頭表面の大部分の癒着が消失する。第二次性徴の時期に入り亀頭や陰茎の急速な増大が起こると、包皮の狭小輪は受動的に開大し亀頭先端が次第に露出され、思春期後期以降には非勃起時においても亀頭が露出した状態となる。
 包皮は生殖活動が不要な小児期においては亀頭保護の意義を持つ。また、包皮内板には繊細な感覚を司るMeissner小体が豊富に認められ、将来の正常な性行為や性感覚には必要と考えられている。したがって、包皮は決して「無用の長物」ではない。

2) 治療適応
 小児期の包茎は生理的なものであるため通常は治療を要さない。しかしながら、以下のような問題が生じた場合には治療適応と考えられる。
a) 嵌頓包茎:包皮輪が狭小であるにもかかわらず包皮の翻転を無理に行った場合に引き起こされる。亀頭への血流障害が生じる可能性もあるため速やかな整復が必要である。
b) 繰り返す亀頭包皮炎:局所の衛生が保てず、亀頭・包皮の炎症により発赤・腫脹・排膿・排尿痛などを伴う。
c) 有熱性尿路感染症:膀胱尿管逆流などの基礎疾患が合併している場合には尿路感染症のハイリスクとなる。
d) 排尿障害:尿勢不良や排尿時痛を伴う症例。バルーニング現象は外尿道口と包皮輪が一致せず起こることも多く、必ずしも治療は要さない。

3) 治療
a) 保存的療法(ステロイド軟膏塗布 + 包皮ストレッチ)
 一日2回、包皮狭小輪にステロイドホルモン、女性ホルモンまたは男性ホルモン含有軟膏を塗布しその伸展性を改善させる。ステロイド剤はコラーゲン合成を低下させ包皮を薄くする作用や抗炎症作用により伸展性を改善させる。ステロイド剤塗布による全身への副作用はないとされるが、女性ホルモン使用例では女性化乳房が報告されている。4〜8週間の継続で80〜90%以上の治療効果が期待できる。特に、包皮のストレッチ(包皮を愛護的に陰茎根部へと押し下げ、包皮狭小輪に緊張をかけ機械的にその伸展性を改善させる)を併用するとより効果的である。翻転可能となっても再発防止のために包皮ストレッチの継続が重要である。
b) 手術療法
 包皮狭小輪を含めた余剰包皮をリング状に切除し内板と外板を縫合する環状切除術が一般的である。治療効果としては確実であるが、小児症例では通常全身麻酔が必要となる。また、頻度は少ないものの外尿道口狭窄や尿道皮膚瘻などの合併症や手術年齢によっては外陰部手術に伴う患児への心理学的影響、将来の性感覚への影響も念頭に置かなければならない。したがって、小児期では軟膏塗布療法の効果が乏しい閉塞性乾燥性包皮炎などの一部の症例にその適用は限られる。

III. 夜尿症 2,6)
1) 病態
 夜尿症は、「夜間睡眠中に不随意に尿を漏らす」状態と定義され、夜尿のみの単一症候性夜尿症(MNE:約75%)と昼間の尿失禁など下部尿路症状を伴う非単一症候性夜尿症(NMNE:約25%)に大別される。夜尿症の原因として、夜間多尿、排尿筋過活動、覚醒閾値の上昇、発達の遅れ、遺伝的素因などの要因が関与しており、低・異形成腎、尿崩症、糖尿病、二分脊椎症、てんかん、睡眠時無呼吸症候群、異所開口尿管などがその基礎疾患となり得る。
 夜尿症の頻度は、5〜6歳で約20%、小学校低学年で約10%とされ、毎年約15%が自然治癒し中学生までには1〜3%に減るが、まれに成人になっても継続することがある。
2) 治療適応・鑑別診断
 まず、MNEとNMNEとの鑑別が重要となり、問診、身体診察、尿検査、排尿・飲水記録を確認する。患児と養育者の自尊心やQOLの改善のためにも学童以降の症例について、MNEであれば生活指導や行動療法が開始される。NMNEであればその基礎疾患の評価が重要となるため専門医へのコンサルトが必要となる。
 NMNEの評価のポイントとしては、明らかな尿意切迫感や尿こらえ姿勢は過活動膀胱を、女児でドライタイムがない失禁は異所開口尿管に伴う尿管性尿失禁を疑う。また、腰仙部の発毛や色素沈着、臀裂の非対称は潜在性二分脊椎症を疑う。過活動膀胱が疑われる場合は、便秘を防止しつつ抗コリン薬が投与されるが、治療抵抗性であったり、尿路感染症の既往がある場合には後部尿道弁などの器質的疾患の評価のため超音波検査や排尿時膀胱尿道造影検査が必要となる。
3) MNEの治療
 まず、以下の生活指導を行い、徹底する。
a) 就寝前の完全排尿
b) 夕食後以降の飲水制限
c) 便秘の解消
d) 睡眠中の寒さ冷え防御
e) 肥満の是正
 症状の改善が不十分な場合は、積極的な治療としてデスモプレシンによる薬物療法またはアラーム療法を3ヵ月程度継続し、効果がなければ他を行う。さらに効果が不十分であれば併用する。
 デスモプレシンは、バゾプレッシン受容体V2受容体に選択的に結合し、夜間尿量を減少させる。有効率は60〜80%であるが、投薬の中止で再発率は60〜100%とされる。膀胱容量が正常で[想定膀胱容量(ml) = (年齢+2) x 25]、夜間多尿[夜間尿量(ml) ≧ 0.9 x 体重(kg) x 睡眠時間(hr)]の症例に最も有効である。
 アラーム療法では、就寝前に下着にセンサーを装着し、夜尿によりアラームが鳴った時点で起床させトイレで排尿させる。夜間の自然起床というよりも夜間膀胱容量の増大が治療効果のメカニズムとされている。有効率は60〜80%で、再発率も15%であるが、夜間の起床には家族の協力が必要で、脱落率が10〜30%とされる。
 また、このような治療でも効果が十分でなければ、デスモプレシンに抗コリン薬の併用や三環系抗うつ薬を試みる。三環系抗うつ薬は過量投与で心毒性があるため注意が必要である。

IV. 急性陰嚢症 3,7)
1) 病態・疾患
 急性陰嚢症は、陰嚢の急激な痛みと腫脹をきたす疾患群で、その中でも、精巣捻転症、付属小体捻転症および精巣上体炎が高頻度である。特に、精巣捻転症は精巣への栄養血管が含まれる精索が捻れその血流が遮断されることにより発症するため、診断・治療の遅れが精巣の壊死に結びつく最も重要な救急疾患である。

2) 鑑別診断
 精巣捻転症と付属小体捻転症および急性精巣上体炎との鑑別が重要となる。精巣捻転症では他に比べ発症が急激で、左側に多く、夜間睡眠中や早朝起床時の発症が多く、腹痛や悪心・嘔吐を伴うことが多い。また、一過性の同様の疼痛発作の既往を有することがある。したがって、腹痛で受診した思春期の男子では必ずパンツを降ろして陰嚢の診察を行う必要がある。一方、付属小体捻転症や精巣上体炎は昼間活動時に発症することが多く、精巣上体炎では発症が緩除で発熱や尿路感染症による下部尿路症状を伴うことが多い。身体所見では、精巣捻転症では精巣挙筋反射が消失し、精巣が横位挙上となっていることが多い。古典的なPrehn徴候の診断的有用性は現在否定的である。陰嚢皮膚に透見される小さく青く変色したblue dot signは付属小体捻転症に特異な所見である。血液・尿検査では、精巣上体炎では炎症反応の上昇や白血球尿が有用な所見となる。画像検査では簡便かつ非侵襲的な超音波検査が極めて有用であり、精巣捻転症ではカラードプラ法で精巣内血流の消失や減弱の所見が得られる。また、精索が捻転しているwhirlpool signは血流消失以上に有用な所見であるとも報告されている。一方、精巣上体炎では精巣上体の血流増強が認められる。

3) 治療・予後
 精巣捻転症が疑われる場合または否定できない場合には緊急手術が必要となるため、専門医への早急なコンサルトが必要である。手術までの虚血状態を改善させるために専門医により用手的整復が試みられる。成功すれば直ちに疼痛が消失し、精巣の所見も正常となり精巣温存の確率は高くなる。術中に捻転を解除し、血流が回復すれば非吸収糸を用いて精巣固定術を行い、回復しなければ摘除術を施行する。思春期発症の鞘膜内捻転では対側も捻転を起こしやすいbell-clapper deformityの可能性が高いため、同時に固定することが一般的である。精巣捻転症での精巣の予後は捻転の回転度と捻転解除までの時間に依存し、360°以上の回転であれば4時間以内の解除でも精巣萎縮が起こりうる。180〜360°の回転で12時間までに解除すれば萎縮は起こらないことがある。360°以上の回転で、かつ24時間以上の経過では全例萎縮がみられたとされる。
 付属小体捻転症が明らかであれば鎮痛剤投与などの保存的治療、精巣上体炎に対しては抗菌剤や鎮痛剤の投与を行う。精巣上体炎を繰り返す場合には後部・前部尿道弁、尿管異所開口など尿路の基礎疾患の評価が必要である。
 急性陰嚢症の診療においては思春期男子の精巣喪失の防止が究極のエンドポイントとなるが、そのためには医療機関での迅速な診断と治療が必要であることはいうまでもないが、思春期の患者が発症後遅滞なく迅速に医療機関を受診するかが重要な因子となる。したがって、一般男子とその養育者には急性陰嚢症が将来を左右する重要な救急疾患であることを啓発することが必要であり、今後学校保健教育との連携の重要と考えられる。

参考文献
1) 日本小児泌尿器科学会学術委員会編:停留精巣診療ガイドライン.
  日本小児泌尿器科学会雑誌, 14, 117-152, 2006
2) 日本夜尿症学会編:夜尿症診療ガイドライン2016.診断と治療社, 東京
3) 日本泌尿器科学会編:急性陰嚢症診療ガイドライン2014年版.金原出版,東京
4) 浅沼 宏, 大家基嗣:非触知精巣の腹腔鏡診断.小児外科, 47, 825-828, 2015
5) 浅沼 宏:子どもの包茎.チャイルドヘルス, 16, 20-23, 2013
6) 浅沼 宏, 大家基嗣:遺尿症.小児内科, 47, 1047-1052, 2015
7) 浅沼 宏, 松井善一, 青木裕次郎, 佐藤裕之, 大家基嗣:小児の急性陰嚢症.
  腎臓内科・泌尿器科, 4, 360-366, 2016


夜尿症 - おしっことおねしょの話 2016/7/9は終了しました。

区民公開講座 平成28年6月18日のまとめ
加齢と眼科疾患
昭和大学江東豊洲病院 眼科
准教授  岩渕 成祐

 今回江東区医師会区民公開講座にて「加齢と眼」というタイトルで、講演させていただきました。
 今回は、白内障、緑内障、加齢黄斑変性についてお話しいたしました。成人の中途失明者で一番多いのは緑内障、次に糖尿病網膜症、網膜色素変性、黄斑変性の順になっています。1
 白内障は80才になると100%罹患する病気で、世界中では失明原因の第一位になっております。原因は加齢が一番多く、先天性、内分泌性、薬剤性、外傷性があります。症状としてはかすむ、近視が進む、昼間まぶしいなどがあり、進行すると視力障害を来す病気です。水晶体は核と皮質に分かれており、核性白内障、皮質白内障に分類され、両方に濁りが来るタイプもあります。白内障の治療は現在手術が唯一のエビデンスで、白内障の点眼、内服は明らかなエビデンスがないのが現状です。手術は通常7分〜20分程度で終了し、痛みはほとんどありません。施設により日帰り、または入院で行っており、この両方に対応している施設もあります。白内障手術時に眼の中に移植する眼内レンズに現在単焦点、多少点レンズがあります。単焦点レンズはクリアな見え方をしますが、調節力がないためピント合わせをしたところ以外は眼鏡が必要になります。多焦点レンズは、人によっては遠くも近くも眼鏡なしで見えますが、夜間のグレアが出て、見え方のクリアさに関しては単焦点レンズに劣ります。多焦点レンズは先進医療の扱いで、眼内レンズ代は自費になります。手術の合併症としては駆出性出血眼内炎などの場合によっては高度の視力障害を残す重篤なものもあります。また、手術中に水晶体嚢が破れ、眼内レンズを縫い付ける事になると、1時間くらいかかることもあります。その他には手術後数ヶ月から数年して後発白内障を来すことがあり、これは水晶体後嚢の混濁で、YGAレーザーにより視力回復が可能です。

 次に緑内障ですが、こちらは自覚症状が末期まで出ずに、自覚症状が出てきた頃には進行した状態になっていることがあります。以前は緑内障は眼圧が高く、視野障害を来すといわれていましたが、現在では眼圧が正常でも緑内障になってくる事がわかっています。緑内障の分類では閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障があり、隅角が閉塞しているかどうかで分けられます。閉塞隅角緑内障は中年の遠視の女性に多く、急に緑内障発作を起こすことがあり、注意が必要です。治療は、点眼、レーザーですが、根本的には白内障手術となります。これは水晶体が白内障になり、厚さが増し、虹彩を後ろから圧迫し、隅角を閉塞するためで、その原因となる水晶体を薄い眼内レンズに変えることにより発作を起こさないようにします。一方開放隅角緑内障は、自覚症状が乏しく、いつの間にか進行してしまいますので、早期発見には検診が大切になります。検診で眼圧、眼底検査を行うことにより、早期発見早期治療につながります。眼圧が高い開放隅角緑内障に対し、眼圧が正常な正常眼圧緑内障という病気もあり、眼圧だけではスクリーニングができない事もあります。治療は点眼を主体として、点眼での眼圧が下がらず、視野欠損が進行していくと手術を行います。白内障と違い手術を行っても視野は回復せず、視野が悪化するのを防ぐ効果しかありません。緑内障では一度悪くなった視野は回復しないので、早期発見が重要になります。

 最後に加齢黄斑変性です。加齢黄斑変性は約10年前までは有効な治療法がありませんでしたが、ここ10年で飛躍的に治療が進んだ病気です。久山町スタディーによれば加齢黄斑変性は50才以上の日本人の0.87%にみられます。病気の本体は網膜の下の脈絡膜に新生血管ができ、それが網膜に浮腫や出血を起こすことにより視力低下を来します。原因は加齢によるとされていますが、リスクファクターとして喫煙があげられます。この病気も一度視力が低下してしまうと元には戻らないことが多い病気です。自覚症状はゆがみや視力低下です。前駆所見として、眼底に白斑がみられることがあり、これは検診によってわかります。亜鉛と抗酸化ビタミン(Vit C, E, A)により発生率を抑えることができ、有効な治療としては現在主にVEGF阻害薬の硝子体内注射が行われております。しかしその問題点として、加齢黄斑変性は再発しやすく、複数回にわたり注射の治療が必要で、その後も経過観察が必要になります。一回の薬代が約17万円と高額で、保険診療でも複数回投与しなければならない事を考えると、費用の面から治療を躊躇してしまう患者様もいます。喫煙をやめ、緑黄色野菜を多く取ることにより、加齢黄斑変性の発症リスクを減らせますので、そのような生活を心がけていただきたいと思います。


 1 中江 公裕ほか:厚生労働科学研究研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究 平成17年度 総括・分担研究報告書:263,2006(障害者手帳交付者の身体障害者診断・意見書の調査結果)より

区民公開講座 平成28年5月28日のまとめ
子宮・卵巣の病気とその対応
昭和大学江東豊洲病院 婦人科
野村 由紀子

① 子宮・卵巣の構造と機能
 子宮は下腹部に存在し、妊娠して赤ちゃん(胎児)を育てて産むための臓器です。子宮の壁は筋肉でできており、妊娠した際には胎児発育に合わせ伸びたり陣痛をおこすため収縮したりもします。上側(子宮体部)の内部は空洞になっていて、その内側には子宮内膜という膜が覆います。この内膜が次周期妊娠に備えて毎月剥がれて生まれ変わるときに出る出血が月経(生理)です。卵巣は子宮の左右に1個ずつあり、卵子を成熟させて排出(排卵)する、女性ホルモン(エストロゲン)を分泌して子宮内膜を厚くさせる、などの機能があります。50歳前後になると卵巣の機能は終了しますので、月経周期も終了します(閉経)。

② 子宮の病気
1. 子宮筋腫
  子宮筋層からできる良性腫瘍。成人女性の約3割に存在。多発することも多い。エストロゲンの
 影響で増大し、閉経後は縮小。まれに悪性化(0.5%以下)。
  症状:過多月経・貧血・月経困難・不正出血・腹満感・腰痛・排尿排便異常など。 
  検査:超音波検査・MRI検査など。
  治療:
   手術療法:最近は腹腔鏡下手術が多い。子宮全摘術が基本。子宮温存希望の方は筋腫核出
   のみとするが、妊娠分娩時は帝王切開が必要となる可能性や、再発の可能性あり。
   薬物療法:鎮痛剤・漢方・ホルモン剤(対症療法または一時的)。
   その他:子宮動脈塞栓術・集束超音波療法。

2. 子宮ポリープ:子宮の粘膜からできる粘膜の腫瘍。増大時や症状ある時は摘出。
  子宮頸管ポリープ:子宮頸部から発生。症状:不正性器出血。
             検査:視診で可能。治療:直視下に摘出(通常診察時に可能)。
  子宮内膜ポリープ:子宮内膜から発生。症状:不正性器出血・過多月経。
             検査:超音波検査・子宮鏡検査。治療:子宮鏡下摘出術。

3. 子宮頸がん・子宮頸部異形成
   ヒトパピローマウィルス(HPV)感染が原因といわれる。多くの女性が生涯のうちに感染を経験する
  が、ほとんどは免疫機構により自然に排除される。ごく一部の方は持続感染によって正常から子
  宮頸部異形成(前がん)を経て子宮頸がんになる。
  症状:初期は無症状。進行すると不正性器出血、下腹部痛など。
  検査:子宮頸部細胞診(子宮がん検診)→異常あれば組織診・コルポスコピーなど。
  治療:前がんから初期までは子宮頸部円錐切除術で済むが、進行すると子宮全摘術・リンパ節
  摘出術・放射線療法・抗がん剤などが必要となることもある。

4. 子宮体がん
   子宮内膜から発生するがん。好発年齢は40代後半から60代だが近年は若年性も増加。原因に
  エストロゲンが関与する場合が多い。危険因子:肥満・高血圧・糖尿病など。
   症状:不正性器出血
   検査:子宮内膜細胞診・超音波検査・MRIなど
   治療:子宮全摘術・リンパ節摘出術・抗がん剤など。

5. 子宮脱(骨盤臓器脱)
   骨盤内臓器を支える筋肉(骨盤底筋)などがゆるんで、膀胱・子宮・直腸などが腟から脱出する
  状態。原因 加齢・多産・腹圧・肥満 など。
   症状:下垂感・脱出感に加えて、膀胱瘤:排尿障害(残尿・頻尿・尿漏れ)、子宮脱では不正出血、
  直腸瘤では便秘・残便感など。
   治療:骨盤底筋体操・薬物療法(漢方・ホルモン剤)・ペッサリー(腟内リング)・手術療法(近年は
  腹腔鏡下メッシュ手術など)

③ 卵巣の病気
1. 良性卵巣腫瘍
   卵巣内の組織からできる腫瘍。多彩な種類がある。液体を産生する腫瘍は「卵巣嚢腫」。
  症状:増大すると腹満感、下腹部痛など。しかしかなり大きくても無症状のことも多い。
  続発性変化:①破裂 ②茎捻転 ③がん化。 ①・②の場合は緊急手術。
  検査:超音波検査・MRI検査など。ただし摘出しないと良悪性の確定診断はできない。
  治療:手術療法(最近は腹腔鏡下手術が多い) 卵巣ごと、または腫瘍のみ摘出。

2. 卵巣がん
  症状が出にくいため、診断時には進行していることが多い。
  症状:腹満感・腫瘤感・下腹部痛・排尿排便障害 など。
  検査:超音波検査・MRI検査 など
  治療:手術療法(子宮・卵巣・リンパ節などを摘出)・抗がん剤 など。

④ 子宮内膜症
   子宮内膜に似た組織が、本来の部位以外の場所に発生。明らかな原因は不明。
  月経(=子宮内膜が剥がれる出血)の時に内膜症がある場所でも出血が起きる。
  進行すると骨盤内に癒着をきたす。
   発生場所によって名称がある。子宮筋層→子宮腺筋症、卵巣→チョコレート嚢腫、
  骨盤腹膜→ブルーベリースポットなど。
   症状:月経困難症・下腹部痛・排便時痛・性交時痛(月経時以外も)。
     不妊症(炎症による排卵・受精・着床障害、卵管癒着などによる)。
     子宮腺筋症では、子宮筋腫と同様の症状(過多月経・貧血)・腫瘤感。
   検査:内診・超音波検査・MRI検査など
   治療:妊娠希望の方は、積極的な妊娠トライ。
     薬物療法:
     ① 対症療法(鎮痛剤・漢方)
     ② ホルモン療法 偽妊娠療法(低用量ピル)、プロゲステロン療法(ジエノゲスト)、
       偽閉経療法(GnRHアゴニスト)
     手術療法:腹腔鏡下手術が推奨されている。病巣摘出術・癒着剥離術

⑤ 最後に
    初期は無症状である子宮頸がんの早期発見のためにも、婦人科検診・子宮がん検診を
   定期的に受けましょう。また検診では発見しきれない疾患が隠れている場合もありますので、
   症状が強いときや症状が弱くても続くとき・繰り返すときはお近くの婦人科への受診をお勧めします。

 

第2回AED(自動体外式除細動器)講習会  2016/3/19は終了しました。

区民公開講座 平成28年2月27日のまとめ
ピロリ菌と胃がんリスク検診(ABC検診)
南塚内科医院
南塚 俊雄
 ①  ピロリ菌

 長い間、胃には細菌は生息できないと考えられてきました。ところが、1982年、ウォーレンとマーシャルによって、胃粘膜から新しい細菌が発見され、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と名づけられました。この細菌は胃炎を引き起こし、さらに、長期にわたる感染により萎縮性胃炎を引き起こすことが明らかになりました。その後の研究により、このピロリ菌が、胃潰瘍の主要な成因であり、その除菌によってほとんどの例で胃潰瘍の再発を抑制できることがわかりました。また、ピロリ菌陰性者ではほとんど胃がんを発生しないことより、ピロリ菌と胃がんとの関わりも次第に明らかになりました。

 ピロリ菌は螺旋状の細菌で、数本の鞭毛を持っており、それを使って胃粘膜内を移動しています。
 ピロリ菌という呼び名は通称で、正式な名称はヘリコバクター・ピロリです。ヘリコは螺旋、バクターは細菌、ピロリは幽門(胃の出口)を意味しています。つまり、「胃の幽門付近に住み着く螺旋状の細菌」という意味です。
 ピロリ菌が強い酸性状態である胃の中でも生きていけるのは、ウレアーゼと呼ばれる酵素を出して、胃の粘膜にある尿素を分解してアンモニアを産生し胃酸を中和しているからです。
 ピロリ菌は、免疫力の弱い乳幼児期に経口感染すると考えられています。つまり、ピロリ菌がヒトに最も感染しやすい時期は、乳幼児期といわれています。この乳幼児期までは、胃酸を分泌する機能が十分に発達できていないので、ピロリ菌は容易に胃粘膜に達し生育できるのです。このように、ピロリ菌の慢性感染は4~5歳頃までに成立するので、成人になってからのピロリ菌感染はまれです。
次に、ピロリ菌と胃がんとの関わりについて説明いたします。
 
 ピロリ菌の感染が胃粘膜の炎症を惹起し、その長期感染が胃粘膜の萎縮を起こし、一部は腸上皮化生に進展し、最終的に胃がんを発生させると考えられています。
 松尾らは、胃がん3161例について厳密にピロリ菌感染診断を行った結果、ピロリ菌陰性胃がんは21例(0.66%)のみであったと報告しています。これは胃がん患者100人のうち99人はピロリ菌感染胃がんであるということです。逆を言えば、ピロリ菌陰性者ではほとんど胃がんを発生しないことがわかりました。このように、胃がん発生にピロリ菌感染は必要条件と位置づけられると考えられます。


②  胃がんリスク検診(ABC検診)

 わが国の胃がん検診は40歳以上を対象に年1回施行されており、胃X線検査(バリウム検査)が行われています。胃がん検診の受診率は、全国的に低い状況が続いています。現在、死亡率減少効果の点で国から推奨されている対策型検診は、胃X線検査のみです。一方、ABC検診は、煩雑なバリウム検査に比べ、血液検査のみでとても簡単な検査です。そこで、最近注目され、徐々に普及が見られている胃がんリスク検診(ABC検診)について説明します。

 胃がんの原因のほとんどがピロリ菌感染であることは既に明らかです。また、ピロリ菌感染の期間が長いと胃がんになりやすい萎縮性胃炎になります。そこで、ピロリ菌感染の有無を調べる検査(血液中のピロリ菌抗体を測定)と萎縮性胃炎の有無を調べる検査(血液中のペプシノゲンを測定)を組み合わせて、胃がんになりやすいか否かのリスク分類をする検診が胃がんリスク検診(ABC検診)です。バリウム検査や胃内視鏡検査のように、直接胃がんを見つける検診ではありません。
 ABC検診は、「ピロリ菌感染の有無を調べる検査」と「萎縮性胃炎の有無を調べる検査」を組み合わせて、受診者が胃がんになりやすいかどうかをA~Cの3群に分類して調べる検診です。この二つの検査法により、胃がんを診断するというより、胃がんになりやすい胃粘膜を有しているかどうかを判定するのです。
 具体的に、ピロリ菌抗体検査とペプシノゲン検査を組み合わせて、胃の健康度をA、B、Cの3群に分類するのがABC分類です。ピロリ菌抗体検査(-)ペプシノゲン検査(-)をA群、ピロリ菌抗体検査(+)ペプシノゲン検査(-)をB群、ペプシノゲン検査(+)をC群とします(図1)。なお、ペプシノゲン検査(+)(C群)については、ピロリ菌抗体検査(+)ペプシノゲン検査(+)をC群、ピロリ菌抗体検査(-)ペプシノゲン検査(+)をD群とし、4群に分類する場合もあります。

 理論的には、
A群は未感染の人 
B群はピロリ菌感染に伴う胃粘膜炎症はあるが萎縮の程度は軽い人
C群はピロリ菌感染に伴う胃粘膜萎縮の進行した人
とおおむね判断できると思います。
 井上らは、人間ドッグ受診者8286人を対象として各群における胃がんの発見頻度を検討し、C群で1.87%と最も高く、B群で0.21%、A群で0%で、A群からの胃がん発見は1例もなかったと報告しています(図2)。以上より、C群は胃がん高リスク群であり、一方、A群は胃がん低リスク群と考えられます。



 胃がんリスク検診は、ABC分類を応用した胃の健康度チェックです。ABC分類による各群の胃の健康度評価は、次の通りです。
A群:健康的な胃粘膜で、胃の病気になる危険性は低いと考えられます。
B群:少し弱った胃です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍に注意しましょう。定期的に胃の検査をうけてください。
C群:胃がんなどの病気になりやすいタイプです。 毎年、内視鏡検査を受け、胃の病気の早期発見・早
   期治療に努めましょう。

 ABC検診は胃がんを見つける検診ではありません。胃がんになるリスクを判断し、胃がんになる危険性のある方には胃内視鏡検査を受けて頂くための検診です。

 まとめ

 ABC検診は、血液中のピロリ菌抗体検査とペプシノゲン検査を組み合わせたリスク分類であり、受診者が胃がんになりやすいかどうかをリスク判定し、その後胃がん高リスク群に対して内視鏡検査を継続して行う新しい方法です。ABC検診は直接胃がんを発見する胃がん検診ではなく、胃がんになりやすいかどうかを調べる検診です。よって、ABC検診単独では胃がん検診システムは成立せず、適切な画像検査(内視鏡検査等)との組み合わせが必要です。
 したがって、胃がんリスク検診(ABC検診)は、将来、地域検診における胃がん対策の有効な選択肢になり得ると思われます。

参考書籍
1)   浅香正博(2010)胃の病気とピロリ菌 中央公論新社
2)   井上和彦(2014)胃がんリスクABC分類活用マニュアル
    (株)先端医学社 
 

第1回AED(自動体外式除細動器)講習会  2015/10/24は終了しました。

めまいの診断と治療 2015/10/17は終了しました

区民公開講座 平成27年6月6日のまとめ
うつ・不安障害を なるべくお薬を減らしながら 治療するためのケア
リバーサイドメンタルクリニック
院長 鈴木 あい
 2015年 6月6日に江東区医師会 区民公開講座でお話をさせていただきました「うつ・不安障害を なるべくお薬を減らしながら 治療するためのケア」をご紹介させていただきますね。  
 厚生労働省が 3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、平成11年には44.1万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、平成 20年には 104.1万人と 9年間で 約2.4倍に増加しました。また、平成 14から 18年度に行われた、一般住民を対象とした厚生労働省の研究班(主任、川上憲人先生)の疫学調査では、何らかの不安障害を有する方の数は、一生のうちに一度は病気にかかる人の割合(生涯有病率)で 9.2%(約 10人に 1人)、12ヶ月間に一度は病気にかかる人の割合(12ヶ月有病率)では 5.5%(約 18人に1人)でした。患者調査では、平成11年には42.4万人だった不安障害などの総患者数は、平成20年には58.9万人と、9年間で約1.4倍に増加しました。

 このような傾向がある中で、うつ・不安障害をなるべくお薬を減らしながら治療したい、ということは現代社会のニーズであるようにも感じられます。  
 リバーサイドメンタルクリニック(http://riverside-mental-clinic.jimdo.com/)では、女性の患者様を対象に、お一人あたり約90分という時間をかけながら、カウンセリング、前世療法(退行催眠療法の一分野)、マインドフルネス(ストレス治療)などを用いて治療を行っております。  
 リバーサイドメンタルクリニックを受診される患者様のニーズとしては、「なるべくお薬を用いずにメンタルのご病気を改善させたい」「できるだけお薬を減らしたい」というご要望が多いです。他の病院や公的機関などからの患者様のご紹介もいただくのですが、その場合、ご相談内容が保険診療の枠を超えており、かつカウンセリングや催眠療法が適していると判断されたケースがほとんどです。ですので、リバーサイドメンタルクリニックを受診される前に数年から10年以上の通院歴を持つ患者様もおいでです。

 僭越ではありますが、これまでの経験を元に、うつ・不安障害を なるべくお薬を減らしながら 治療するためのケアについて、お話をさせていただきますね。現在ご通院中の患者様が減薬を希望される場合には、必ず主治医と相談しながら進めてくださいね。  
 まず、ここでいう「お薬」とは、例えば、抗うつ剤や抗不安薬などのことを指します。例えば、これらのお薬を減らしていこうとする時、一言で言うと、お薬で減らしている症状を、お薬以外の方法で減らそう、と考えることになります。それらのアプローチは、大きく分けて、

・体からのアプローチ
・生き方など心からのアプローチ
・人・社会へのアプローチ

に分かれます。ですが、変えていく方向は同じです。キーワードは「楽になる」です。自分の体と心、そして生き方が楽になり、さらに自分も人も幸せに楽になっていく方向に変えていきます。

  まず、体からのアプローチ(体のケア)では、一般的に健康づくりの基本となる、バランスのよい食事、適度な運動、睡眠、休息、規則正しい生活リズム等はメンタルのご病気の治療でも大切です。体が楽になっていくからです。

 運動では、自律訓練法・マインドフルネス(瞑想・ヨガなど)などのリラックス法を取り入れることをお勧めしています。マインドフルネスは、体のだるさ(倦怠感)や不眠の改善にも大きな効果が認められています。

 睡眠、休息に関して、うつ病や不安障害の患者様の場合には、例えば休むこと自体に罪悪感が生じることがあり、睡眠や休息を取っているように見えても、実際には十分休めていないことがあるため、治療ではその患者様がつまづきやすい点を含めて話し合いながら改善していきます。

 次に、生き方など心からのアプローチ(心のケア)でよく用いられる方法をいくつかご紹介いたしますね。これらは一般的に精神療法と呼ばれることが多いです。  

 まず、カウンセリング・認知行動療法は、自分の本当の思いを知って、自分らしい生き方につなげるために役立ちます。また、心と体を楽にする瞑想・ヨガなどのマインドフルネスは、不安状態、うつ状態に大きな効果が認められています。

 当院の専門でもある、退行催眠療法の一つである前世療法は、「 現世のみを扱っては見つけにくい生き方のくせを探ったり、現在抱えている課題(病気や人間関係など)の悩みのルーツを探ることで、それらの改善をもたらそうとする治療法」です(当院のホームページの一つである、前世療法センターのホームページ http://pastlifetherapy.jimdo.com/ より)。前世療法は、現在米国を中心に注目を集めている治療法で、当院でも、うつ・不安障害の治療において効果を認めています。詳しくは、前世療法センターのホームページや当院のブログ (http://ameblo.jp/past-life-therapy/) をご参照ください。

 そして、人・社会へのアプローチ(人・社会とのつながりのケア)についてです。人・社会へのアプローチでは、自分も人も幸せに楽になっていく方向に変えていきます。様々な方法がありますが、ここでは、メンタルのご病気の患者様が忘れがちな福祉のサポートについてお話しさせていただきますね。  

 メンタルのご病気を長く抱えた患者様が自立をしようとするときに、つまづくことが多いのが就労です。患者様の中には、受診前に、ご自身の心の準備が整っていないにも関わらず、焦って無理矢理自分を鼓舞して自力で就職先やアルバイト先を見つけようとし、結果的に、仕事に就くことや、仕事を続けることができなかったご経験をお持ちの方もおいでです。中には、家に引きこもってしまわれた方もおいでになります。  
 そういった患者様が、福祉の就労支援、例えば、就労移行支援、就労継続支援などを通じて仕事のスキルを学び、障害者雇用枠で就職をしたことで、安定して就労に至ったケースもあります。就労支援を受けた時の支援者との出会いのおかげで、人に相談をすることが苦手で抱え込みやすい性格だった方が、困った時に相談をすることができるようになったというケースもあります。患者様は、福祉の支援を通じて、人とつながり、社会とつながることを学ばれたのです。

 ここで、これらのケアがどのように減薬につながっていくのか、お話しさせていただきますね。まず、これらのケアを学ぶことによって、患者様の気づきや腑に落ち感が増え、心身がリラックスし、少しずつ、ストレスのかかる状況によりよく対応できるようになっていきます。メンタルの症状への対応の仕方も学ぶため、次第に症状に自分自身で対応できるようになっていきます。これを、セルフケアの能力が高くなってきたという表現をすることがあります。  
 ご自身で(お薬を用いずに)症状に対応できるようになってくるため、少しずつうつ状態、不安状態は減ってくるのですが、この時点ではまだ、状況によっては、体調が不安定になることもあります。安定して症状が減っているわけではないため、一般的にこの時点ではまだ減薬の状態にはなっていません。

 これらのケアを学ぶことを継続していくと、次第にこれらの方法が身に付いていきます。小さな変化が積み重なってきて、心と体・人間関係・環境などが生きやすく変わってきます。そして少しずつ、生きることが楽になってきたと感じることも出てきます。この状況を、生きる力がついてきたと表現することもできます。

これを継続していくと、症状が強い時には嵐のように荒れ狂っているとすら感じた人生が、穏やかに整ってきます。そうすると、症状が安定して改善してきます。この時に減薬が可能になるわけです。

体調が改善しお薬が減ると、体もより軽く感じることが多いです。この感覚はとても心地の良いものです。ですので、これらのケアを学ぶためにはコツコツと努力することが必要となりますが、その労力はあっても、減薬できてよかったと思えることのほうが多いです。

診察を踏まえ、私が「減薬できる体調ですよ」とお伝えすると、満面の笑みでガッツポーズをされる患者様もおいでです。素敵でしょう?

これらのケアの治療法の利点は、その効果が長く続いたり、効果が時間と共により大きくなる可能性があることです。自分が変わることへの自信がつき、ストレスのかかる状況が生じても、より上手に対応できるようになってきます。また、お薬と比べ、副作用が少ないという利点もあります。続けることが大切なので、まずできるところから始めてみましょう。

お読みいただき、誠にありがとうございました。

注:この講座の内容について、よろしければ前世療法センターのホームページ
(http://pastlifetherapy.jimdo.com/)もご参照ください。より詳しく内容をご紹介しています。
 

区民公開講座 平成27年4月18日のまとめ
「被害が急増しているスーパートコジラミ(薬に強いナンキンムシ)
子どもに蔓延しているアタマジラミ 」
東京都豊島区池袋保健所
矢口 昇

子どもに蔓延しているアタマジラミ

 保健所へのアタマジラミ症の相談が急増しています。シラミ駆除剤が年間80万本売れている現状があり国立感染症研究所によるインターネットリサーチを利用したアタマジラミ寄生の全国実態調査では発生世帯数は約83万世帯/年と推定しています。保育所が一ヵ所しかない離島からも相談があったことからも子ども達に蔓延していると言ってもいいでしょう。
 なぜ子ども達に蔓延しているでしょうか?大人には何故少ないのでしょうか?それは子どもたちのライフスタイルが関係しています。子ども達は集団生活の中で体を寄せ合って遊ぶ・学ぶことが多く、髪と髪が長く触れる機会が大人よりずっと多いので、髪から髪へアタマジラミがうつりやすいのです。さらに、姉妹でブラシやクシなどを共用することでうつることもあります。また、子どもが一人での洗髪や、互いに姉妹で洗髪する最初の頃は、髪が十分に洗えていないことがありアタマジラミの寄生数を増やす原因ともなっています。
 アタマジラミが寄生しているか・いないかの判断は、髪の毛に卵が「ある」・「なし」によりできますので、まずは後頭部や耳の後ろ側を中心に探しましょう。卵はセメント様物質で髪の毛に固定されていますので、つまんで引っ張ると引っ掛かる感じがあります。卵は虫めがねで見ると涙の滴のような形をしています。成虫を見つけたい場合は、目の細かいクシを使い梳いてあげると成虫が捕れることがあります。アタマジラミは頭皮より吸血して生きていますが皮膚に直接寄生することはありません。6本の脚先の「はさみ」を使って、とても素早く髪の毛を鋏みながら移動することができますが、髪の毛から離れると2~3日程度で死んでしまうので髪の毛から離れたくありません。ですからアタマジラミが飛んだり跳ねたりするようなことはしませんしその能力もありません。日頃からのアタマジラミの予防として、子どもとのスキンシップを兼ね頭髪にフケの様な白い卵がついていないか定期的に観察し、疑わしきものは指でつまんで取り除いてください。アタマジラミ症だとわかったら、通常は駆除剤を使用しますが、駆除剤を使用しても、卵の抜け殻は残ります。これらを取り除かないと駆除完了の判定が難しいので抜け殻を取り除くことが必要です。
 なお、駆除剤の成分であるスミスリンが効かないアタマジラミがいます。国立感染症研究所によりスミスリン剤が効かないアタマジラミが5%確認されていますのでご注意ください。スミスリン剤が効かないアタマジラミの場合は、駆除専用の梳きクシで駆除します。梳きグシは、目がとても細かいので、前処理として丁寧なブラッシングやリンスなどをしないと子どもが痛がり手間がかかります。アタマジラミは不潔とは無関係で寄生していますが、インターネット上では不潔にしているから寄生しているなどの間違いや、寄生していないのに駆除剤を予防として頻繁に使用する(皮膚炎を起こすことがあります)など正しい知識とは言えないことも掲載されていますので、正しい知識や駆除方法の詳細を知りたい場合は、国立感染症研究所昆虫医科学部又は全国保健所長会マニュアル集にリンクされている資料を参考にするとよいでしょう。

スーパートコジラミ(薬に強いナンキンムシ) 

 テレビなどで「スーパートコジラミ」又は「スーパーナンキンムシ」というフレーズを聞いたことがないでしょうか?トコジラミとナンキンムシは同じ虫の事ですが、正式な名前はトコジラミと言います。トコジラミはシラミの仲間ではなく、カメムシの仲間です。ご年配の方はナンキンムシ(南京虫)の名前の方がご存知かもしれません。しかし、今、被害が急増して問題となっているトコジラミはピレスロイド系の殺虫剤に強く、トコジラミに効果があると説明書に記載されていても駆除ができません。このトコジラミの事をマスコミではスーパートコジラミなどと言っています。トコジラミは寝ている夜中に出没し、露出している手や足、首などを刺して吸血します。露出していない皮膚(下着下の皮膚)は刺しませんので痒みの原因を調べる時の参考にしてください。また、初めて刺された方は最初の頃は痒くありません。何回か刺されてから初めてアレルギー反応として痒みなどが出てきます。多くの方は痒みの原因をダニ被害と思い込みダニ用の殺虫剤を使用する方が多くみられますが、ダニ用の殺虫剤ではスーパートコジラミは駆除できません。ダニ対策を繰り返しているうちにトコジラミが増えてしまい、あまりの痒さで寝ることが出来なくなることもあります。
 なお、多量に発生させた場合は、自分で駆除することが困難になります。駆除業者に頼むと2LDKで15万~50万円くらい費用がかかります。駆除経費を安くするためにはトコジラミが多量に付いている布団やベッドを自分で廃棄したり衣類の熱処理等をしなければなりません。ゴキブリ程度の害虫と考えているとひどい目に遭いますのでご注意ください。
 隠れているトコジラミを見つける方法ですが、トコジラミは吸血のため真夜中に行動しますので、眠いでしょうが夜中に起きて、手、足、首周りのシーツや布団にトコジラミがいないか探します。
 トコジラミは部屋を明るくすると素早くすき間に逃げ込みますので、時間をかけて探しても見つかりません。電気をつけたら、すぐに手足周りの布団等を確認して2~5㎜の素早く動く茶色っぽい虫がいないか探しましょう。又、トコジラミが好む潜み場所である布団やベッド周り・ふすまの隅・畳などのすき間の周辺には黒ゴマより小さめの墨色の糞をしますので、糞を探すことにより潜み場所を発見することができます。怪しい虫をみつけたら保健所に虫を持って行き確認してもらいましょう。スーパートコジラミであっても、有効成分が「プロポクスル」や「マイクロパウダー配合のメトキサジアゾン」入りの製品であれば駆除が出来ます。薬局やインターネットで購入可能です。

吸血後のトコジラミ

図書館貸出本から発見されたトコジラミと本の血糞

アタマジラミ

区民公開講座 平成27年2月7日のまとめ
「大人の旅行医学講座」
吉田まゆみ内科
吉 田 眞 弓
 
 現在、年間海外渡航者は、約1700 万人(国際観光振興協会)、その中で、旅行中に脳血管障害や心筋梗塞などの重病で入院加療を受けるものは年間700 人以上と推定されている。これらの疾患は、適切な初期治療を行えば回復可能な場合も少なくないが、訪問先の国の医療設備が整っている場合でも、言葉の問題や医療情報が不確実であるために、適切な高度医療の恩恵を享受できない場合もある。
 また、特に途上国の熱帯地域や衛生状態が十分に整っていない地域では、あまり経験のない疾患への暴露・感染の可能性や、非汚染地域へ感染症を持ち込むリスクもあり、特別な健康への配慮が必要になる。
 近年は障害を持つ人々や高齢者が積極的に海外へ出かける傾向にある。しかし、サポート体制が十分ではないため、旅行をあきらめるケースも多い。また、2020 年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、日本訪問者の医療サポートニーズは増加すると予想され、日本国内での具体的なサポート体制を構築することも急務である。
 このように旅行医学は、感染症、熱帯医学、予防医学、救急医学、消化器病学、皮膚科学、環境医学などの医学的知識はもちろん、海外旅行先での地理的、社会学的知識も必要とされる。

〔1〕感染症と予防
  2007 年4 月~ 2012 年4 月の間、海外旅行後に横浜市民病院感染症外来を「発熱」「下痢」などの感染症を想定して受診した1,421 例の内訳を示す。(立川ら:図1)

感染症外来を受信した症例

 日本の地理的条件から、輸入感染症の内訳は、東南アジア、インド、インドネシア地域との関連が高く、アフリカ、中南米との関連は低かったが、頻度と重症度、有効な治療により治癒可能という点から、マラリアが最も重要である。
 
①旅行者下痢症
  発展途上国を訪れた旅行者の20 ~ 50%が罹患するといわれている。旅行地到着後、多くは2~ 3日以内に発症。下痢は通常3~ 5 日で改善するが、1%が入院を要し、5%が2 週間以上の慢性下痢をきたす。
 原因は、毒素型大腸菌(ETEC)によるものが50 ~ 80%と多く、カンピロバクタ、サルモネラ、赤痢などが続く。
  旅行中の水や食べ物に注意するといった予防が最も重要で効果的である。万一、罹患した場合も、水分補給と整腸剤で改善するものがほとんどである。ニューキノロン1 回服用+ロぺミン2㎎ 服用で 水様下痢の期間が50.4 時間から20.9 時間に優位に短縮したとの報告がある。ただし、タイにおけるカンピロバクタはキノロン耐性が85%である。また、高熱、1日7回以上の水様下痢、粘血便を認める場合は、医療機関を受診する必要がある。

 
②マラリア
 マラリアは、2005 年のWHO UNICEFの報告によると世界では年間5 億人以上が感染し、100 万人以上が死亡している。毎年、先進国からの旅行者の2 万人以上がマラリアに感染しているといわれている(現地での治療者を含めると実数はもっと多い)。本邦でのマラリアの報告は、2000 年以降やや減少傾向にあるが、いまだ年間50 ~ 60 例の報告がある。マラリアは予防・治療薬があること、特に熱帯熱マラリアは一旦罹患すると重症化し、診断が遅れると容易に死亡に至る疾患であることから、輸入感染症として常に念頭に置いておくべき疾患である。
  マラリアの診断は、赤血球内のマラリア原虫の確認で可能であるが、現在は、簡易検査キットで診断できる(図2:キットは輸入。保健適応外。)。

図2マラリア診断キット
 図2マラリア診断キット

 個人で実施できる予防は、強力な防虫スプレーの使用、長袖、長ズボン、帽子や首にタオルを巻くなどの蚊よけの対策、蚊帳の使用、マラリアを媒介する熱帯シマ蚊は夕方~夜間に活動することから、日が暮れたら極力外出を避ける等がある。
 サハラ以南アフリカ、パプアニューギニア、ソロモン諸島、アマゾン川流域などのへ7 日以上(マラリアの潜伏期間が7 日)の予定で滞在する場合は、抗マラリア薬の予防投与の適応である。本邦では2001 年よりメフロキン(メファキン 久光製薬)が薬価収載された唯一のマラリア予防、治療薬である。

〔2〕高山病
 海抜2500 ~ 3000 m以上の高度への旅行は、高山病の危険がある。国内でも富士山や穂高岳など3000 m以上の山への登山で高山病の報告がある。海外では、ヒマラヤトレッキング、ペルーのマチュピチュ、チベット、ネパールなどへの旅行は注意が必要。
 頭痛、嘔気、嘔吐など二日酔いに似た症状(山酔い)がでるが、症状が出現したらそれ以上高いところへは上らない、速やかに下山することが大切。症状が進行すると高地脳浮腫、高地肺水腫へと悪化し、死に至ることもある。保健適応はないが、ダイアモックスが高山病の治療薬、予防薬である。

〔3〕慢性疾患治療中の方と旅行保険
 高血圧、脂質代謝異常、糖尿病など慢性疾患で服薬治療中の場合、旅行予定期間+7日分(天候悪化等で旅程が延長する可能性あり)の処方薬を持参する。海外旅行の場合は、預入荷物が届かないケースも多々あるため、必ず手荷物として持参する。
 海外で突然の疾病や持病の悪化、事故などで救急入院治療した場合、想像以上に高額な医療費を請求されることが多い。入院や治療費に数百万~数千万、また、日本から家族がかけつける、看護師が付き添い特別機で帰国する場合の費用も高額である。重病でチャータージェット等を利用するとその費用は1000 万円以上にもなる。クルーズの場合、船内での治療も原則全額自費、重病の場合、最寄りの寄港地の医療施設に搬送となる。クレジットカード付帯の旅行保険ではカバーしきれない場合もあるので注意が必要である。

〔4〕空の旅
1)航空機の機内環境(図3)

図3 機内と機外の環境
 図3 機内と機外の環境

 巡航高度30000 フィート(10000m)で航行中の機内は、0.8 気圧に加圧されている。これは海抜8000 フィート(約2500m)に相当し、一般人にとって高山病の症状を発症せずに過ごせる高度である。機体の腐食の問題があり、加湿ができず、湿度は20%以下、サハラ砂漠と同等の乾燥した状態である。また、空気の性状は、想像よりはるかに清浄で、2~3分ごとに完全に入れ替わり、再利用された空気もHEPAフィルターを通すことにより、微生物のエアゾルは他の公共機関よりはるかに少ない。

2)航空機の機内環境が健康に及ぼす影響として、
 ① 低酸素分圧 既存の疾病の悪化、つまり呼吸器・心血管疾患の悪化、中〜高等度の貧血がある場合 に低酸素症をきたす恐れがある。COPDや最近起こった心筋梗塞、不安定型狭心症などの重篤な疾患のある人では、酸素解離曲線のわずかな変化でも重篤な心不全や呼吸不全につながる可能性がある。
 ② 気圧の変化 航空性中耳炎、副鼻腔炎、航空性腹痛、歯痛、ダイビング直後の搭乗による減圧症の発症などがある。
 ③ 低湿度 飛行中の航空機内の湿度は20%程度と乾燥しており、脱水、粘膜や皮膚の乾燥、角膜の損傷等が発生する。
 ④ 揺れ 空酔い、外傷
 ⑤ 長時間の座位 深部静脈血栓症(ロングフライト血栓症、エコノミークラス症候群)

3)飛行機に搭乗できないケース(図4)

図4 飛行機に搭乗できないケース
 図4 飛行機に搭乗できないケース

 ・ 感染症 機内の空気は清浄に保たれているとはいえ、長時間の密室空間の移動であり、飛沫感染、空気感染をするすべての感染症で活動期の場合は搭乗不可。
 ・ フライト中に重症化する可能性の高い人 循環器・呼吸器の重大な疾患を有する人、急性の貧血等は、酸素分圧の低下により病状の悪化の恐れがある。また、胸腹部・眼内手術術後の方は、気圧の低下により体内の空気が膨張するため、術後一定期間は搭乗不可。
 ・ 妊娠36 週以降の妊婦 正常な妊娠であれば支障はないが、妊娠36 週以降では何の兆候もなく突然の出産のリスクがあるため搭乗できない。
 ・ 精神疾患 フライト中に急変し、自傷他傷のそれがある場合。
有病者は、担当医もしくは医療搬送を担当する医師が記入した航空会社提出用の診断書を提出し、航空会社担当部からの許可がある場合は搭乗可能である。また、車いすや機内ストレッチャーの使用、機内での酸素吸入や出発時や到着時の救急車の利用などの対応が必要な場合、専用窓口に相談するとよい。(JAL:プライオリティゲストサービス、ANA:スカイアシスト)

4)機内急病人発生と対策
  機内急病人発生率は 乗客100 万人あたり 国際線で15.3 人、国内線で3.5 人
                 1000 フライトあたり 国際線で 3.9 人 国内線で0.8 人
内訳は 失神・意識障害 32%、小外傷 14%、腹痛嘔吐などの胃腸障害24%と比較的軽症のものも多いが、心疾患 7%と重大な疾患も少なくない。
わが国では、航空機内に救急箱、簡易薬品セット、AEDを搭載している。また、救急患者が発生し、当該機に乗り合わせた医師が用いるための救急医薬品及び医療用用具も搭載している。(図5)

図5 ドクターズキット(全日空)
 図5 ドクターズキット(全日空)

〔5〕船の旅
 ジェット機で遠距離を短い時間で移動する旅行が主流とは言え、この2~ 30 年間で世界のクルーズ客は10倍に増加し、年間約1000 万人がクルーズを楽しんでいる。
 クルーズ船上で発生する疾病の種類は陸上で発症する疾病とほぼ同様である。ちがいは、船上では人口密度が非常に高いこと(クルーズでは、いろいろな寄港地から他国籍の乗客を受け入れるため、インフルエンザ、ノロウイルス、レジオネラの集団発生の報告が散見されるが、わが国での集団発生の報告はない)、年齢層がシルバー世代中心と比較的高いことがあげられる。
 2002 年から5年間の飛鳥のグランドクルーズ(約40 日)、ワールドクルーズ(約100 日)における解析を示す。(図6・図7)

図6 長期クルーズの集計
 図6 長期クルーズの集計

図7
 図7

 上気道炎・肺炎などの呼吸器疾患、消化器疾患などいわゆるコモンディジーズが全体の約40%であった。皮膚疾患は靴を履いている時間が多いためか、足白癬が多く見られた。整形外科疾患とあるのは、乗船前からあった、変形性脊椎症や膝関節症などの悪化により受診したもので、外傷は船内で受症したものである。この中には大腿骨頚部骨折や上腕骨骨折など旅行継続が困難となり途中下船した例もある。船内のドアなどに指を挟まれたことによる指骨骨折がないクルーズはないというほどしばしばみられる。また、歯科に係るトラブルも事前に治療設備がないとインフォメーションしているにも関わらずしばしば遭遇する。持病の悪化による受診は比較的少なく、定期的な経過観察のための受診がほとんどであった。

 血栓症は、下肢静脈血栓症が23 例、脳血栓症が4例であった。静脈血栓症は、船内に限ればまれであるが、寄港地でのバスや列車などを長時間利用するツアーが危険因子であるという。
 ジェット機での移動と異なり、時差による健康障害は軽微であるが、日中は寄港地に停泊、上陸し観光ツアー、夜は移動中の船内で様々なプログラムを楽しむため、思った以上に疲労が蓄積し体調を崩しやすいなどの注意が必要である。

●長期クルーズに参加する場合の注意点は
 ①疾病・傷害保険に加入する
 船内で受ける医療は、基本的に自由診療であり、 船内で対応できない疾病は、寄港地で医療を受けるとになる。
 ②事前の健康アンケートは詳細に記入する
 ③緊急の連絡先を確保する
途中下船の判断、下船後の救護のために数か所確保
 ④持病のある乗客は
  1)主治医からの情報提供書を準備する
  2)常備薬は クルーズ期間+ 1~2週間分を持参する
  3)船内で可能な医療行為を確認する
 ⑤歯科治療はできないので済ませておくこと
 ⑥義歯、メガネなどのスペアを用意すること
 ⑦クルーズ中は、心身に無理のないスケジュールで楽しむことを心掛ける。 

まとめ
 旅行は余裕をもって計画し、特に1か月以上の長期旅行の場合は、予防接種のための時間も考慮し3~4 週間前にはかかりつけ医に相談する。
  ①予防接種の計画と実施。
  ②慢性疾患罹患者は、旅行期間+αの内服薬を処方してもらう。
  ③必要に応じて、診療情報提供書の準備。
  ④マラリア・高山病予防などの相談や予防薬の処方。
 旅行先の感染症健康情報、予防接種等は、厚生労働省検疫課のFORTH等のサイトを参考にする。外務省のサイトでも治安や医療事情などの安全情報の確認ができる。
 海外でのトラブルは疾病、交通事故、爆発災害などに巻き込まれるものが多く、医療事情、言葉の問題、想像以上に高額な医療費の請求など旅行者だけでは対処できないことも多い。家族が現地にかけつけるときの援助費用や、日本に搬送するときの移送料手配など困難な問題も多い。クレジットカード付帯の保険ではカバーできない事項もあるため、事前に確認しておくことが大切である。
 今回の発表にあたり、資料提供ならびにアドバイスをいただいた、JAL 健康管理室牧信子医師、元ANA 健康管理室五味秀穂医師、元日本郵船クルーズ吉田二教医師、商船三井蓮村哲医師に深甚なる感謝の意を表します。

〈参考書籍〉
矢崎義雄総編集(2013)『朝倉内科学』朝倉書店
E.C.Jog(2012)『トラベル・アンド・トロピカル・メディシン・マニュアル』
(株)メディカル・サイエンス・インターナショナル
日本旅行医学会雑誌
篠塚規(2009)『旅行医学質問箱』メディカル・ビュー社
海老沢功(1997)『旅行医学』日本維持新報社

図8 診察室(飛鳥Ⅱ)
 図8 診察室(飛鳥Ⅱ)

図9 飛鳥Ⅱ 緊急処置室
 図9 飛鳥Ⅱ 緊急処置室

野球肘を知ろう!~子どもが長く楽しく野球をするために~2015/9/5は終了しました。

うつ・不安障害をなるべくお薬を減らしながら治療するためのケア2015/6/6は終了しました。

被害が急増しているスーパートコジラミ こどもに蔓延しているアタマジラミ2015/4/18は終了しました。

大人の旅行医学講座2015/2/7は終了しました。

「第2回AED(自動体外式除細動器)講習会 」 2015/1/24は終了しました。

区民公開講座 平成26年11月22日のまとめ
「過活動膀胱 -診断と治療-」
荒木医院 院長
荒木 重人
 これからの高齢化社会は骨粗鬆症、認知症、糖尿病などの生活習慣病からくる脳梗塞、心疾患、過活動膀胱のような排尿障害、更年期疾患などでQOLが低下することが予測されています。つまり超高齢化社会において「年齢に伴って低下するQOLとの戦い」が必然と言えます。
 まず私たちの正常排尿とはどんな状態なのか以下に示します、1回の排尿量は250ml以上、1日の排尿量は1500ml以上、1回あたりの排尿時間は30秒以下、1日の排尿回数は7回未満、排尿間隔は3~4時間持つ、夜は排尿で起きない、このように言われています。さてこのような正常排尿に異常をきたした状態を下部尿路症状(LUTS:Lower urinary tract symptoms)と言います、ICSで定義された概念で、蓄尿時の異常、排尿時の異常、排尿後の異常などに定義されています。過活動膀胱はこのLUTSに包括され、「切迫性頻尿を主体とする症状症候群」ということになります。簡単に表現すると「我慢できない頻尿がある患者さん」ということになります。昨今の疫学調査で過活動膀胱患者さんは約810万人存在しますが、うち治療しているのは200万人程度と少なく、特に女性患者さんの受診が少ないと言われています。またその特徴として、主観的で、問診でしかわかりにくい側面があり、完治はしないが、しばしば良くなることがあり、放置するとQOLが著しく悪化し、抗コリン薬が良く効くなどが挙げられます。また過活動膀胱の最大の因子は加齢と言われています、したがって過活動膀胱は高齢化社会になるほど増加する疾患と言えます。
 過活動膀胱の診断は診断マニュアルに沿ったアルゴリズムに基づきます、まず過活動膀胱症状質問票(OABSS)を使いスクリーニングを兼ねて十分な問診をいたします、次に検尿、採血、超音波、尿流測定、残尿測定など検査し、これらを総合的に判断して診断します、排尿日誌を患者さんに書いてもらうとより詳細な診断が可能となります。
 LUTSの日常生活支障度が疫学調査で検討されていますが、男女とも夜間頻尿が最もQOLを障害し、特に男性で夜3回以上トイレ行くグループの生存率は低下すると報告されています。夜間頻尿の原因は内科的なものも少なくなく不眠、うつ、ムズムズ足症候群、繊維筋痛症、内服薬(医原性)、心不全、腎不全、肝不全、睡眠時無呼吸症候群、肥満、生活習慣病(高血圧など)などが挙げられます、また生活習慣が原因と思われるものとして、水分過剰摂取、運動不足、アルコール、カフェイン飲料、塩辛い食事などがあります、泌尿器科関連だと、過活動膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎、LOH症候群、EDなどがあります。夜間頻尿の治療として生活習慣指導は大切で、実際飲水指導などの生活習慣の是正で夜間頻尿が改善することがしばしば経験されます。
当院過活動膀胱患者さん94例(H26年1月~5月、追跡期間1ヵ月~7年8ヵ月)につき検討しました、男性51例、女性43例と男性が多い傾向にありました。男性の尿漏れは25%、女性は60%と尿漏れは女性に多い傾向でした、このことは男女の解剖学的差によるものと推測されます。男性51例中前立腺肥大の患者さんは40例(73%)と高率でした、このことは前立腺肥大症になると過活動膀胱を高率に合併していると言えます。また生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)を合併している患者さんは約80%と高率でした、つまり過活動膀胱は生活習慣病と深い関係があることを示唆しています。また合併症を持った高齢の患者さんが数多く認められ、さらにうつ、認知、不眠、多量の飲水などが過活動膀胱治療を複雑にしていました。
 過活動膀胱の治療はなんといっても抗コリン薬(推奨グレードA)が中心となります、その有効率は70~80%と高率に上り、世代の新しい薬ほど良く効いて、副作用も少ないと言えます。一方効果の面でもその強さなどに若干の違いがあることが日本でのメタ解析で分かってきました、他方作用時間、副作用などを含めた使い心地に差があることがわかっています、当然薬物なので患者さんによる個人差も出ます、これらを考慮して色々試して使ってみることが効果的です。その他の治療として骨盤底筋体操はグレードAです、減量はグレードA、カフェイン・アルコールなどの適切な制限はグレードBなどです。内科的疾患も高率に合併していますので、同時並行で治療が必要となります。
 まとめ:①超高齢化社会を迎えるため男女とも過活動膀胱は増加する。②中でも夜間頻尿が最もQOLを障害する。③抗コリン薬が大変良く効く。④過活動膀胱の治療に骨盤底筋体操が有効です。⑤生活習慣病(血管障害)との深い関係が示唆されています。最後に過活動膀胱を治してハツラツ人生を送りましょう。 

「第1回AED(自動体外式除細動器)講習会 」 2014/9/27は終了しました。

「予防接種の基本と10月から変わる水痘、成人用肺炎球菌ワクチンについて」 2014/9/27は終了しました。

「加齢に伴う眼の病気とその治療」 2014/6/21は終了しました。

区民公開講座 平成26年5月24日のまとめ
更年期を美しく、らくに過ごすために
百合レディスクリニック
丸本 百合子
1)更年期を正しく理解する
 更年期は「排卵などの機能が消失しはじめ、やがて月経が不順から完全に閉止し、閉経となる。閉経の前後5年間をいう。」と定義されているように、閉経前後の「時期」をさす。年齢的には40代後半から50代前半くらいまでだが、個人差が大きい。卵巣ホルモンの分泌が次第に減る時期なので、からだや心の変化が大きい。
 「更年期」「更年期障害」という言葉の誤用が多いので注意が必要だ。「若年性更年期」など、不正確な用語が使われることが多いため、「体調が悪いこと」が「更年期」と勘違いする女性が多い。これは、不定愁訴のある女性に対して「それは更年期だろう」と安易に対応する人がいる、過労に気づかせないため「更年期のせい」を使う、健康食品などの販売戦略に「あなたも更年期!」という“脅し”が使われるなどのためだろうか?
 更年期と間違えやすい状態には、ストレスや過労による月経不順、月経前症候群などがあるし、ほかの病気が更年期障害と誤認されていることもあるので注意が必要だ。
 更年期かどうかを知るためには、月経不順または、閉経であること、およそ該当年齢であること、そしてホルモン検査をすると、エストロゲンが減少、 ゴナドトロピン(LH,FSH)が増加している。
2)更年期の症状
 更年期の初期は、月経周期が短くなり、少量の出血が長く続くことがある。後期になると、月経周期が長くなる。通常1年無月経なら閉経と考える。
 のぼせ・ほてり(ホットフラッシュ)、突然発汗、動悸(どうき)などが起こる。逆に温かい場所でも冷える、冷え性もある。
 不安感、うつ状態、イライラ感、不眠などの精神症状。これらは職場や家庭のストレスで起こることもあり、どこまでをホルモン低下による症状と考えるかは難しいこともある。
 肩こり、腰痛、しびれ感、体力低下、疲労感。これらは、過労や長時間のパソコン作業などで発生することも多い。
 骨量の低下と骨粗しょう症、粘膜や皮膚の乾燥、かゆみ、性交痛。
3)ところで今なぜ更年期が問題?
 寿命が延長して、更年期以後の人生が長くなった。更年期は、それ以後の40~50年を生きるため、認知症や寝たきりの予防も視野に入れねばならなくなった。平均寿命が50年の時代なら、更年期を迎えれば長寿、50才は年寄り扱いされたが、一方では高齢者として尊敬され、現役をリタイア(隠居)できた。今の50代はまだ、「若い人」なので、体力が低下しても現役で働かねばならない。 仕事の責任も大きく、家事、介護、高齢で出産した場合は、育児の負担も大きい。また、更年期以後、減ってゆく骨量を維持することも大切になってきた。
4)更年期を美しくらくに過ごすために
 他の病気に気をつける。疲労やストレスを避ける。運動や趣味など楽しむのもよいが、「○○をしなければいけない」と、がんばりすぎはダメ。家事や介護を夫や子どもに分担したり、職場では若い部下を上手に使うなど、負担を減らす工夫を。「アタシ更年期なんだから」と宣言して、堂々と手抜きするもよし。
5)更年期障害に使われる主な薬
 ①ホルモン補充療法 (HRT)
 ホルモン補充療法は、エストロゲンとプロゲステロン製剤を使い、経口、パッチ、ゼリーなどがある。HRTには、更年期障害の改善、皮膚・粘膜の若返り効果、性交痛の改善、骨粗しょう症の予防と骨折率の低下、大腸がんの発生率低下、子宮内膜がんの発生率低下が期待できる。
 デメリットとして、不正出血、乳がん、冠動脈疾患、虚血性脳卒中、血栓症の発生率増加などが知られているし、HRTを使えない人もいるので注意して使うことが必要だ。
 ②漢方薬
 漢方薬は、証に合ったものを正しく使えばかなりの症状が改善される。しかし、証や投与量を誤ると副作用が出ることがある。特に、漢方薬の併用には注意が必要。証が異なれば、同じ症状でも、Aさんに効いた漢方薬がBさんに効かないことがある。
 ③睡眠導入剤・向精神薬
 不眠の解消だけで症状が改善する場合も多い。不眠や軽いうつ状態なら、内科や婦人科でも投薬をしてくれることもあるが、重症のうつ病や死にたいくらいの状態なら、精神・神経科の専門医を受診すること。
6)更年期、発想の転換を。
 卵巣ホルモンの分泌状態が変化して、心身が不安定になるのは更年期だけではない。それなのになぜ更年期だけ、マイナス・イメージがあるのだろう?それは若さや母性や体力が女性の価値であるという思いこみから、くるのではないか。
 しかし加齢がネガティブにとらえられるのは、おかしい。人間にはその年代なりの美しさがある。生きてきた歴史で磨かれた女性の美しさは、年輪として増してゆく。
 閉経すれば月経を気にせず温泉にいかれる、妊娠の心配がなくなる。そんなメリットもある。出産に耐えられない年齢に閉経というのは、いわば自然の摂理。
 疲れやすくなることもあるが、これは「無理をしてはいけないよ。」というからだの声。20代のペースで、40~50代を生きるのは無理。無理を通せば、病気を背負い込む。体力の落ちることに引け目を感じていたら、人生80~90年は渡れない。更年期に体調が悪くなるのは、体力に応じた暮らし方を工夫するための安全弁。
 更年期は成長の過程。私たちは死ぬまで、さまざまな経験を蓄えながら成長を続ける。「美しく」とは外見ではなく、生きてきた軌跡の美しさ。健康や若さがプラスで、病気や老いはマイナスという価値観では、高齢社会は生きられない。健康とは、どんなに無理をしても疲れず、病気にもならないからだを作ることではない。「生老病死」という言葉がある。「老い」や「病気」と共生しながら、自分自身のからだをいたわり、慈しみ、より伸びやかに楽しく生きる道をさぐってゆく時代に私たちは生きている。

「糖尿病を正しく知ろう」 2014/2/22は終了しました。

「第2回AED講習会」 2013/1/25は終了しました。

「季節型うつ病の予防法に関して」 2013/12/7は終了しました。

「第1回AED講習会」 2013/12/21は終了しました。

高齢者の難聴について」 2013/10/5は終了しました。

区民公開講座 平成25年7月27日のまとめ
高齢者の足(下肢)の痛みについて
城東社会保険病院
 院長  中馬 敦
 高齢者では、骨、関節の老化や変形により、下肢にさまざまな痛みの出ることが少なくありません。これらの痛みの原因、病気を理解し、治療及び日常生活の工夫をしていく必要があります。今回は坐骨神経の痛み、股関節の痛み、膝の痛みについてお話しします。
 坐骨神経痛はおしりから下肢の後ろ側全体に広がる痛みです。坐骨神経痛の原因の大半は腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症等の腰の病気です。腰椎椎間板ヘルニアは腰椎の椎間板が背中側へ飛び出して坐骨神経につながる神経根を圧迫して腰痛、坐骨神経痛、下肢のしびれなどの症状がみられます。腰部脊柱管狭窄症は腰椎の脊柱管が狭くなり、脊柱管内にある神経根を圧迫し、坐骨神経痛、下肢のしびれ、間欠性跛行(はこう)(歩行していて下肢の痛みしびれが強くなり休み休みでないと歩けないこと)などの症状がみられます。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症の治療には保存療法と手術療法があります。保存療法には消炎鎮痛薬等を使用する薬物療法、コルセット装着、腰椎牽引、温熱療法、運動療法等の理学療法、神経ブロックがあります。日常生活では腰に負担をかけないよう、中腰で重いものを持たない、外出時には杖やシルバーカーを使うなどの工夫があります。保存療法で症状が改善しない場合やしびれや麻痺などの神経の障害が進行している場合には手術療法を検討します。手術療法は、腰椎後方より骨の一部を切除し神経の除圧を行う方法が多く、腰椎不安定性のある場合には骨移植、金属による固定も併用します。
 股関節の痛みは股関節の前だけでなく、おしりや大腿部にもみられます。原因の大半は変形性股関節症です。股関節は骨盤のくぼみ(臼蓋)に大腿骨頭がはまっている構造で、すき間には関節軟骨があります。変形性股関節症は股関節の軟骨が徐々にすり減っていき、炎症が起こり痛み症状がみられます。進行すると関節軟骨がさらにすり減り、最後は軟骨が消失し骨の変形もみられ、症状は痛みが強くなり、筋力が低下し、左右の足の長さに差がでて歩行障害もみられます。変形性股関節症の治療には保存療法と手術療法があります。保存療法には消炎鎮痛薬を使用する薬物療法、関節内注射、運動療法があります。日常生活では減量により体重の股関節にかかる負担を減らす(6ヵ月で体重の約5%減を目標)、テーブルとイス、ベッドの洋式生活を取り入れる、外出時には杖やシルバーカーを使うなどの工夫があります。保存療法で症状が改善しない、非常に強い痛みがある、日常生活が不自由な場合には手術療法を検討します。手術療法はいくつかありますが、60歳以上の高齢者では大半で人工股関節置換術を行います。人工股関節置換術は、基本的には60歳以上のかなり変形の進んだ例に行います。入院期間は3~7週間程度です。手術後の痛みの改善効果はかなり高く、生活の質の向上がみられます。ただし静脈血栓塞栓症、感染、脱臼などの合併症に注意する必要があります。変形性股関節症以外の股関節の痛みの原因となるものは、外傷・骨折、大腿骨頭壊死症、関節リウマチ、化膿性股関節炎などがあります。
 膝の痛みの原因の大半は変形性膝関節症です。膝関節は上に大腿骨、下に脛骨、前に膝蓋骨があるという構造で、そのすき間に関節軟骨、半月板があります。変形性膝関節症は膝関節の軟骨、半月板が徐々にすり減っていき、炎症が起こり痛みがみられます。最初は立ち上がる時や動き始めに痛む程度ですが、進行すると関節軟骨、半月板がさらにすり減り、正座ができない、歩行がつらい、安静時や夜寝ていても痛むといった症状がみられます。変形性膝関節症の治療には保存療法と手術療法があります。保存療法には消炎鎮痛薬を使用する薬物療法、関節内注射、運動療法があります。変形性股関節症と同様に、日常生活では減量により体重の膝関節にかかる負担を減らす、洋式生活を取り入れる、外出時には杖やシルバーカーを使うなどの工夫があります。保存療法で症状が改善せず、非常に強い痛みがあり日常生活が不自由な場合には手術療法を検討します。60歳以上の高齢者に行う手術療法には、膝関節鏡視下手術、人工膝関節置換術があります。膝関節鏡視下手術は、膝関節周囲に2~3ヵ所の小切開を加えて行う体への負担の少ない手術で、変形の少ない例や半月板損傷の例に行います。入院期間は4日~2週間程度です。痛みの改善効果は個々の例で異なり、術後長期(5~10年以上)にわたり痛みが改善する例もあれば、術後6ヵ月~1年で痛みの再発する例もあります。人工膝関節置換術は、かなり変形の進んだ例に行います。入院期間は3~7週間程度です。手術後の痛みの改善効果はかなり高く、生活の質の向上がみられます。ただし静脈血栓塞栓症、感染、などの合併症に注意する必要があります。変形性膝関節症以外の膝の痛みの原因となるものは、外傷・骨折や靱帯損傷、関節リウマチ、痛風・偽痛風、化膿性膝関節炎などがあります。
 以上お話ししましたが、足(下肢)が痛くなったらほうっておかず、近所の整形外科に受診することが大切です。医師の診察を受けて、痛みの原因は何か、どのような治療が必要か、日常生活の注意点などを教えていただき理解するとともに、自ら積極的に治療に参加することが重要です。 

区民公開講座 平成25年6月29日のまとめ
髪と頭皮の健康を守ろう!
順天堂大学医学部皮膚科学
植木 理恵
 人の印象に髪型や髪の色は大切です。例えば同じ人が、七三分けのロマンスグレーの場合と、金髪でアフロヘアの場合では全く印象は異なります。髪は生命を維持するために必ず必要ではありませんが、自己表現の場であり、精神生活を安定させ、社会性を保つために重要です。朝、髪型がうまくいかないと、一日、もやもやした気分になりませんか?
 さて、脱毛とは何でしょう?
 脱毛は①生理的脱毛(人には同じ毛根が成長と休止を繰り返す毛周期があり、誰でも毎日髪が抜けます。1日100本以内の脱毛は正常範囲です)、②病的脱毛(生理的脱毛以上に髪が抜けたり、一部分だけ抜けて生えてこない場合など)の二つに大きく分かれます。
 病的脱毛の原因は、1.加齢、2.男性型脱毛症、3.先天性脱毛症、4.円形脱毛症、5.内臓疾患に随伴する脱毛、6.頭皮の皮膚病に伴う脱毛、7.薬物や放射線治療などの医原性脱毛、等です。ただし、加齢は個人差が大きいのですが誰にでも起きる変化で、男性型脱毛症は男性ホルモンにより毛を作る細胞の活動が弱まりやすい体質の方に起きる変化で、いずれも病気ではありません。
 最も多い病気の脱毛症は円形脱毛症です。赤ちゃんから高齢者まで発症する、毛根周囲に免疫の失調による炎症が起こり脱毛する皮膚病です。原因は自己免疫と考えられ、多くの人が思っているような精神的ストレスがきっかけとなる方は3割以下です。コイン大にまとまって抜ける場合が多いのですが、頭髪すべてが急激に抜けたり、眉毛・睫毛・体毛なども含めた全身の毛が抜ける重症な症状もあります。コイン大に1,2ヶ所抜けている程度では自然治癒も多いのですが、繰り返したり、3ヶ月たっても生えてこない場合などでは皮膚科で治療が必要です。急激に容貌が変化するので、発症後の精神的ストレスが高い病気です。
 いわゆる薄毛の原因には、加齢、男性型脱毛症、内臓疾患に随伴する脱毛症、頭皮の皮膚病に伴う脱毛、医原性脱毛があります。
 頭皮に生じた皮膚病が原因の場合、フケやかゆみを伴います。脂漏性皮膚炎は皮脂によってマラセチアという真菌(カビ)が増えて、フケ、赤み、かゆみを繰り返します。毛染めのかぶれがひどくなると頭皮がジュクジュクして髪が抜けてしまうこともあります。ペットからうつる真菌で毛が抜けることもあります。いずれも、適切な治療と日常の頭皮ケア(頭皮にあった洗髪など)が必要です。髪は皮膚の一部なので、頭皮が健康でないと健康な髪が作られません。
 甲状腺の病気や膠原病、糖尿病、貧血、低栄養でも髪が抜けます。特に女性では膠原病や甲状腺の病気が隠れていることがあるので、ご家族に膠原病や甲状腺の病気がある方は検査が必要です。大切なのは、全身の健康が保てないと髪の健康は保てないということです。尚、治療による医原性の脱毛もあるので、新しい治療開始後に抜け毛が増えた時は主治医に相談してください。
 男性型脱毛症は男性ホルモンの作用で、一部の領域(前頭部、頭頂部)の毛を作る働きが弱まり、成長期間が短く、休止期間が長くなり、細い毛が増える変化です。男性も女性も男性ホルモンに毛根が敏感に反応する体質の方に現れます。女性は男性より軽症です。男性ホルモンが多くなる思春期以降に始まり、男性では30歳位から気になる方が増えますが、中には20歳前後で症状が出てくる方もいます。病気ではありませんが、精神的ストレスを強く感じる方々が多く、男性ホルモンの作用を弱くする内服薬が男性向けに発売されています。血行を良くして、毛を作る細胞の活動を高める塗り薬は女性でも男性でも効果があります。尚、女性で、体毛が太く、生理不順がある場合は、卵巣の病気を調べることもあります。
 誰にでも生じる加齢変化は頭部全体の毛が細くなり、伸びが遅くなります。進行を遅くするには、毛根の細胞の活動を高めるために血行を良くするのが効果的です。市販の育毛剤の多くは血行を改善する作用があります。さらに近年、毛の研究が進み、毛の成長期を長くする成分や、毛の活動を弱める成分がわかってきて、育毛剤に応用されています。また、髪を育てるためにはバランスよく食べ、良質の睡眠をとることが大切です。洗いすぎで髪や頭皮が乾燥したり、抜けるのが怖くて洗わないと、皮脂で頭皮が荒れて髪の健康が損なわれます。ご自分の頭皮に合わせた洗髪の間隔とシャンプー剤を選びましょう。パーマや毛染めは髪と頭皮を傷めないように利用して下さい。髪の色が明るく、ふわっとしていると、地肌が目立たなくなります。お化粧や、明るい色の服を着て、髪に人の目がいかないように工夫するおしゃれも楽しんでください。
 全身の健康を保ち、自分にあった頭皮ケアで健康な髪と頭皮を守りましょう。

おなか元気ですか?」 2013/3/16は終了しました。

「AED(自動体外式除細動器)講習会」 2013/1/26 終了しました。

区民公開講座 平成24年11月17日のまとめ
高齢者の性生活
尾関皮膚泌尿器科  尾関 全彦
 高齢社会を迎えた我が国においては、高齢者の生活の質の向上(QOL)が大きな課題であり、この生活の質の向上が鍵の一つであり高齢者の性の問題であると考えられます。高齢者では全身の老化の一部分現象として、内分泌環境性機能に変化が起こり、次いで性意識行動が影響される。
 性は何のためにあるかといえば生殖です。子を生み育て生命遺伝子を伝え、子孫を存続させることのために男女二つの性が必要だからであり、男性と女性の営む性行動によって新しい生命が生みだされ生殖の目的が達せられる訳です。
 SEXしたいと思う状態を性欲といい、このSEXしたい思う本体は、人間の大脳の前頭葉内の間脳のうち視床下部漏斗部というあたりにあり、このSEXする脳のことを性中枢と呼んでいます。この性中枢には刺激を受けて興奮する部分と逆に刺激を受けると抑制する部分とがあります。
 人間のSEXは、(性ホルモン)と(性中枢)それに(外的刺激)の三つの条件によって行われているとい言われています。性ホルモンには、男性ホルモンと女性ホルモンが3種類ずつあり、20歳~30歳までがピークであり、それ以降分泌は減少しますが、男女共死ぬまで性ホルモンは分泌しています。性ホルモンには、もう一つ脳から出る性腺刺激ホルモンがあります。このホルモンは男女共に50歳を過ぎてからの方が20歳代よりも血中濃度が高いそうです。外的刺激というのは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚などの五感からの刺激で、特に重要なのはパートナーからの刺激である。例えば、容貌、容姿、教養、動作などの相手からの刺激である。
 年をとるとSEXが弱くなるのは、年とともに性ホルモンの血中濃度が低下する、性中枢の脳細胞が老化して刺激に対する感受性が弱まること、例えばSEXする脳が健全であってもSEXしない脳の方がストレスなどで機能が落ちていれば肉体的に健康であってもSEXできないことになる。人間の性中枢は大脳皮質によって調整されているから温度、季節、年齢に関係なく、いつでもSEXできるのです。従って死ぬまでSEXを楽しみたい人は、SEXしたい脳、すなわち大脳皮質である頭を鍛えることが大切です。
 高齢者の性機能に関して男性では、精巣の萎縮、勃起能力の低下が50歳頃より進行してくる。女性では更年期以降が加齢に伴い、外陰、膣、子宮、卵巣などの性器が萎縮してくる。
 加齢に伴ない性欲は減退するが、男性では50歳代、女性では40歳代で、性欲の減退を感じ始める者が最も多い。しかし両性ともに性欲は高齢者にても比較的よく保たれる。外性器の退行性萎縮の結果、局所の充血、感度、分泌物の減少、反応時間の遅れ、勃起陰茎の硬度の低下などにより全身の反応も減退する。
 高齢における性交頻度は個人差がありますが、40歳を過ぎると徐々に低下し始め、60歳以降には低下が著しくなります。40代までは数%ですが、60代前半では14.2%、80代で62.6%となっています。一方性的欲求は、男性では70歳代まで90%が性欲を維持し続けています。60歳代では日本も欧米でも性交は週1回以下が多い。性欲の加齢による変化は、異性を目で見て楽しみ、接触したいという欲望は高齢に至るまで保たれています。男性では、ワイセツ物に興味を示し、テレビのお色気番組やY談などで性意識を高めているようです。
 性交を停止した年齢は女性では40代後半に認められ閉経と一致しております。各年代にわたって性交頻度は徐々に低下していますが、90歳代まで性交を行っているものもあります。
 性交を中止した理由は、男性の場合は能力の消失が最大の理由であり、女性の場合は配偶者の死亡が最大の原因です。
 職業別の性生活を豊かにしているのは、頭脳労働者が1位で、次いで肉体労働者で無職の者より性的能力を多く保たれている。経済面からみると、当然のことながら経済的に豊かなほど性生活が豊かになる傾向がみられる。
 性生活に対する満足感に関して、妻が健在な老人でも、その47%は性的不満を持っているといい、その原因は妻が応じてくれないという答えが26%あった。男子老人全体では、性的不満グループは70%にも達している。なぜ相手が応じないのか女子の57%が性的欲求は全くないと答え、また異性との交際は面倒くさいと答えています。
 男子の性的能力の減退、「インポテンツ」現在はEDといいますが心理的、器質的要因が原因ですが、数年前より勃起力を助けるED治療剤が発売され、非常に高い効果がありますので、専門医に相談して下さい。ただし、保険医療は使えません。
 独身老人は異性との交際を、男子老人が90%、女子は25%が望んでいます。しかし交際の見通しとなると、「だめだろう」が男子75%、女子82%となっています。その原因としては、男子では「トシだからあきらめる」が38%、「家族や世間体」が28%、女子では「家族や世間体」を42%が気にし、男子の「トシだから」を上回って女子の性に対しての社会的規制が強く感じられます。
 結論として、一般に高齢者における性反応、性行動の減退、低下の原因としては、
   (1) 性反応の速度の変化
  (2) 反復による単調さとマンネリ化
  (3) 精神的、肉体的疲労の蓄積
  (4) 生活上の不摂生、とくにアルコール、ニコチン中毒
  (5) 糖尿病、高血圧、心臓病、うつ病などの不安
  (6) それらの病気の予防、治療薬の長期使用
  (7) 仕事や趣味への没頭による無関心
  (8) 精神的若さの消失、性意識の変化
  (9) 社会的背景となる高齢者本人への心理的負担、経済的負担
 最後に、高齢者だからといって、その性生活をエンジョイして悪いという理由はなく、老人は老人の性生活を楽しむ権利があります。一生懸命さんざん働いてきました。残り少ない人生を明るく、楽しく元気に暮らして行くよう皆さん、頑張って生きてゆくべきです。

「AED(自動体外式除細動器)講習会」 2012/10/27 終了しました。

「こどもの食物アレルギー」は終了しました。

 「高齢者に多い目の病気」は終了しました。

区民公開講座 平成24年5月26日のまとめ
知っておきたい子宮がんの話
子宮頸がんを中心に
順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター婦人科科長 宮﨑亮一郎
子宮にできる悪性腫瘍は、大きく3種類に大別されます。具体的には、子宮頸がん、子宮体がん、子宮肉腫の3種類です。子宮頸がんや子宮体がんは、細胞診検査を中心に発見することが可能ながんですが、子宮肉腫は、がんとは異なり子宮の筋肉内に発生することが多く、子宮筋腫と明確な区分ができず、摘出して組織を顕微鏡で検査して初めて診断されることが多い疾患です。
子宮頸がんと子宮体がんには、それぞれ子宮頸部異形成、子宮内膜増殖症など、いわゆる前がん状態を示す用語があります。これらの病名は即がんになるというものではありませんが、正しい知識と定期的な細胞診検査を行うことが必要です。
今回は、がんの中でもその原因がウイルス感染によってによって引き起こされる固形がん、子宮頸がんについて解説します。最近、子宮頸がんの原因の一つとして、イボウイルス(HPV)の感染によって引き起こされることが明らかにされてきました。子宮頸がんのおよそ7割が、発ガン性HPVの感染によって起こることが分かってきました。このウイルスは約100種類以上の型に分類されています。このうち16、18型が最も子宮頸がんと関係が深い型ですが、16型は他の型より潜伏期間が短いことが知られています。臨床的にもこのウイルスの検出が可能になり、ハイリスク群やローリスク群などと分類することが可能になり、さらに昨年から軽度・中等度異形成では型分離も可能になりました。
このウイルスは主に性交渉によって起こるとされていいます。性交経験のある女性のおよそ8割が一度はHPV感染するといわれています。健常女性の約10〜20%、若い女性(20歳代)では20.4%に、また、80歳以上の女性にも検出されることが明らかになりました。他方、男性の約60%にも検出されることが明らかにされました。
HPVの感染は、誰にでも起こりえるものなのです。
子宮頸がんは、幅広い年代の女性にみられますが、最近では20〜30代の女性に急増しています。初期には全く症状はありません。検診を受けていれば、前がん状態で発見される可能性が高く、子宮を失うことなく完治しうる病気です。
さらに、子宮頸がん予防ワクチンの接種による発がん性HPVの感染予防と、定期的な検診によって早期に発見することで、子宮を温存することが可能な病気になってきました。昨年からは、多くの自治体で小学生高学年・中学生に対して公費負担でワクチン接種が開始されたところがあります。これは性交経験のないうちに接種を行おうとするものです。個人としては、自己負担で接種することが可能な状況になりました。しかし、ワクチン接種のみでは、全ての子宮頸がんを予防することができません。正しい知識を身につけて、ワクチン接種後も1年に一度は検診を受けましょう。

区民公開講座 平成24年3月17日のまとめ
「こわーい胸の痛み」 -狭心症・心筋梗塞の病態・治療・予防を知ろう-

平成24年3月17日
浅川医院 浅川 洋

狭心症とは心臓を栄養する血管(=冠動脈といいます)が狭くなり、狭い部分の先が酸欠になって苦しくなる状態。
心筋梗塞とは冠動脈が完全に詰まってしまい、急に心臓が動かなくなってしまう状態です。狭心症には2つの原因があります。1つは動脈硬化病変(=プラークといいます)によるもの。もう1つは冠動脈のけいれん(=スパズムといいます)によるものです。いずれも手のひら位大きさの範囲で胸の真ん中ややや左側が重苦しくなったり、締めつけられたり、痛くなったりします。プラークによるものは器質的に血管が狭いので駅の階段を昇るなど心拍数が上がると症状がでます。これに対しスパズムは安静時に起こりやすく、夜間や早朝に症状がでることが多いです。いずれもニトログリセリンの舌下が有効なので、まずは診断をつける意味でも舌下をしてみることが1番です。
プラークによるものには風船やステントで血管を拡げる内科治療やバイパス術という外科治療があります。心筋梗塞はその場で致死的な状況になってしまったり、救命できても梗塞前よりも弱い心臓となり、多くの治療を必要とします。狭心症のうちに治療をしてしまうこと、あるいは狭心症にならないように、喫煙、メタボリック症候群、脂質異常症、糖尿病、高血圧、高尿酸血症などの治療や予防が必要です。
 

区民公開講座 平成23年11月19日のまとめ
「イビキと睡眠障害」
平成23年11月19日
クリニック東陽町 岡本克郎
 「イビキ」とは、睡眠中に軟口蓋または舌根部が狭窄し、そこの粘膜が気流で振動して音を発する現象で、広範によく知られている。本人の体調によって変化があり、しばしば本人には感知されないため、同室で眠っている家族や旅行中に友人などから迷惑がられる。
 大方は、疾患として深刻な害を及ぼすことは少ないが、時には睡眠時無呼吸症候群と関連して治療を要する場合もあり、そうでなくても、中高年以降は、高血圧、肥満を含む心循環系疾患とは相関を持つことが知られている。
 睡眠時無呼吸症候群は、統計上は中枢性より閉塞性が多いが、慢性化した場合は混合性となっていく傾向もあり、標準的な治療法も確立しているので、専門外来を受診すべきであること、その他、睡眠時遊行症、夜驚症、REM睡眠行動障害、ナルコレプシーなど、一般にはあまり知られていない疾患についても概説し、それぞれの注意点を説明した。また、慢性の扁桃炎や鼻ポリープ、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)などから発する「イビキ」もあり、特に小児の場合は積極的にこれらを疑って耳鼻科領域で検査し、必要に応じて治療すべきであることも説明した。
 「イビキ」を防止する方法についても、その発生のメカニズムから考えられ得るあらゆる手法、商品化されているものもあれば未だ研究途上のものもあることを含め、それらの方法を具体的に紹介した。「睡眠障害の診断・治療ガイドライン」にも触れ、日常の生活の中で出来ることを紹介した。
スライドはこちら環境によっては時間がかかることがありますのでご了承ください。 

区民公開講座 平成23年5月28日開催 まとめ
「いやな水虫… どうして防ぐ?どうして治す?」
まるやま皮膚科クリニック   丸山隆児
1. 水虫とはどんな病気か
 人の皮膚表面は角質という硬いタンパク質でおおわれています。この角質部分に白癬菌というカビ(真菌)の一種が寄生した病気を白癬と呼びます。白癬は全身どこにでも生じますが、とりわけ足と足の爪に多く、俗に水虫と呼ばれます(正式には足白癬、爪白癬と言います)。水虫は日本に大変多い疾患で、ある調査によれば日本人の2000万人以上が水虫に罹患していると推測されています。

2. 水虫の治療について
 足や足の爪には水虫によく似た病変がいくつかありますので、水虫かなと思ったら医師の診察を受け、顕微鏡検査で水虫かどうかをきちんと判定してから治療を開始するようにして下さい。足の水虫は通常塗り薬で治療します。①両足全体にくまなく外用すること、②1日1回両足全体で約1g程外用すること、③完全に症状が消えるまで2~3ヶ月は続けること、の三点をしっかり守ることが重要です。爪水虫は塗り薬では治りにくく、多くの場合内服薬が必要となり、市販薬では治療できませんので、皮膚科を受診して下さい。

3. 水虫の予防法について
 治療していない水虫患者からは常に白癬菌がばらまかれています。ですから、家族に水虫の人がいる場合は確実に治療してもらいましょう。ジム、プール、飲食店など不特定多数の人が靴を脱いで利用する空間の床にはほぼ確実に白癬菌が落ちており、靴下を通り抜けた菌が足に付着してしまいます。ただし付着した菌は石鹸で丁寧に洗えば除去することができますから、毎日石鹸で足を洗う習慣さえ守れば水虫をほぼ確実に予防できます。

4. まとめ
 水虫はありふれた疾患ですが、放置しておくと家族や周囲の人への感染源になりますし、いずれは治りにくい爪水虫に移行したり、足の壊疽のような重い病気を引き起こしたりすることがあります。水虫を疑ったら医師の診察を受け、早めの治療で治してしまって下さい。

区民公開講座 平成22年11月27日開催 まとめ
子宮頚がんとHPVワクチンの最近のトピックス
 東峯婦人クリニック    和田順子
1.はじめに
子宮頚がんは、子宮の入口近くに発生し、20-30才代の女性にもっとも多く、また急速に増加しているがんです。子宮頚がんの原因はヒトパピローマウイルス(以下HPVと略します)の感染であり、これには120ほどの型があります。このうち15種ほどが頚がんの原因になるといわれています。ことに日本人は、頚がん患者の60%は16型、18型です。
HPVは性交渉などから皮膚に感染し、子宮頚部の上皮に潜入、増殖します。大部分は2年くらいのうちに症状もなく、自然に治ってしまいますが、感染が持続すると子宮頚部に異形成という変化を起こし、さらに感染者の3%ぐらいが前がん病変に進行、またその一部が頚がんとなります。

2.ワクチン接種の意義、方法など
インフルエンザの予防には、インフルエンザワクチンが使用されるように、子宮頸がんにもワクチンがあり、これはHPVに対する抵抗力、すなわち免疫を人工的に付けて感染を予防する方法です。
ワクチン接種は肩から腕にかけて存在する三角筋という名前の筋肉に行います。半年をかけて三回おこなうことで終了です。
接種のあとは30分ほど待合室に残っていただきます。当日は激しい運動は避けていただきますが、お風呂にも入れます。
接種部位が赤くなったり、痛み、腫れなどが出ることもありますが、数日で消失するようです。胃の症状が出たりしても、通常はそのままなおってしまい、生命にかかわる心配はありません。

3.おすすめしたいことですが、、、
この頃は、女子中学生へのワクチン接種が広く報道されていますが、それ以上の年齢の方にも効果があります。かりに現在HPVに感染していても、ワクチンには治療効果はありませんが、現在の病気が治ったあと、今後の感染が予防できます。

4.先に述べたように、このワクチンは頚がんを60―70%予防しますが、もし予防しきれなかった場合には、定期的な子宮頚がん検診でチェックが可能です。2年おきに、細胞診断という方法で、異形成や前がん病変の検出が可能ですから、適切な治療により完全な回復ができます。予防接種と定期検診により、健康な人生が送れます。

区民公開講座 平成22年7月10日開催 まとめ
地域で子どもを虐待から守ろう・・・「虐待の気づき方と対処法」
特定非営利活動法人
子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク
理事長 山田 不二子
 「子ども虐待の通告」と言うと、どんなイメージを持ちますか? 我が子を虐待する悪い親を通告することと思っていませんか? 児童福祉法には要保護児童(守ってあげる必要のある子ども)を通告するようにと定められており、児童虐待防止法には「虐待を受けたと思われる児童」を通告するように規定されています。“虐待する親”を通告するのではなく、“虐待を受けたと疑われる子ども”を通告するということを忘れないでください。
 親を通告すると思ってしまうと、親を疑うことに罪悪感を感じてしまいます。または、親に恨まれるのではないかと心配になってしまうでしょう。
 でも、虐待・ネグレクトを調査したり、子どもを保護したりする職責を担う専門機関に、親に虐待やネグレクトをされて支援や保護をする必要のある子どもがいることをお知らせして、その子どもを守ってあげることなのだとわかれば、通告に対するためらいが和らぐことと思います。通告は、虐待やネグレクトを受けて苦しんでいるのかもしれない子どもを助けるための支援を開始するのに必要な“合図”ないしは“スイッチ”なのです。子どもを虐待やネグレクトから救うことと、親の人権を侵害する危険性とを天秤にかけるとき、人はつい、声の大きな親(大人)の方を重要視しがちになります。でも、それは、取りも直さず、より弱い立場にある子どもを救える可能性から手を引くことになるのです。
 子どもを裏切らないでください。今年の1月に幼い命を落とした江戸川区の小学1年生は、ある歯科医師に虐待の事実を語りました。そして、その歯科医師は勇気をもって、その子を通告しました。それなのに、私たちはあの子の命を救ってあげることができなかったのです。あの小学1年生の尊い命に報いるためにも、身近にいる子どもに虐待やネグレクトが疑われたら、その子どもを“守るべき児童(要保護児童)”として通告しましょう。

区民公開講座 平成22年5月29日
加齢性眼病変の最新の検査法と治療法
薄葉  澄夫
 区民公開講座として、加齢性眼病変の最新の検査法と治療法について、講演しました。
まず、私の診療所で使用している、OCT(Optical Coherence Tomography)光干渉断層計と自動静的視野計について説明しました。
 このOCTは網膜の断層写真を撮影する装置ですが、網膜の浮腫(種々の原因で網膜が腫れる事)の状態を明らかにするとともに、網膜神経層の厚さを測定する事ができます。さらに、網膜の断層像を積算することにより、視神経乳頭や黄斑部の三次元構造を表すことができます。
この事は、糖尿病網膜症や網膜中心静脈閉塞症において、視力低下の原因の一つである、黄斑部浮腫の程度や範囲を記録する事が出来、治療の効果を判定する事が出来ると云う事です。
また視神経乳頭の三次元構造を明らかにすることは、緑内障の所見である視神経乳頭陥凹の拡大を明らかにし、視神経繊維層の欠損の拡大も明らかにする事が出来ます。この事も、緑内障治療の効果を判定する上で、重要な事です。
 次に自動静的視野計についてですが、新しい視野計は視野障害の程度を付属しているコンピューターソフトが自動で計算し、視野の増悪傾向を判定してくれます。これも、緑内障の治療効果を判断する上でOCTと合わせて用いられ、大いに有用です。
 次に最新の治療法についてですが、光線力学療法と抗がん剤の一種である、血管内皮増殖因子阻害剤について説明いたしました。
 まず光線力学療法ですが、光増感色素(ポルフィリン系化合物)を静脈注射し、色素が新生血管に集積したところで、レーザーを照射します。レーザー照射された光増感色素の作用で発生した活性酸素が新生血管細胞を破壊し、新生血管の縮小を来たします。
つぎに血管内皮増殖因子阻害剤ですが、これを眼球内の硝子体に注入することで、加齢性黄斑変性症の新生血管が縮小し、さらに、抗炎症作用と強力な血管透過性抑制作用を持っている為に、糖尿病黄斑症や網膜静脈閉塞症の網膜浮腫が軽減します。
 これらを症例のOCT像を示し、治療効果の判定を行いました。

区民公開講座 平成21年11月28日
中高年者の膝痛に対する治療法
田 尻  健
 中高年者の膝痛の大部分は、変形性膝関節症によるものである。軽症のものまで入れると700万人もの患者さんがいると言われている。この病気は、加齢による長年の膝の酷使や筋肉の衰えのために関節の軟骨が磨耗、損傷して発症するものである。五十歳頃から起こり始め、年齢を重ねるとともに患者数が増え、男性より女性に多い傾向を示す。O脚の人、肥満の人に頻度が高く、椅子から立ち上がる時、階段の昇降などで膝痛が起こり、次第に関節の可動域制限を生じ、関節水腫(関節に水がたまる)を引き起こす。 
治療法  
(1) 基礎療法 
  減量、膝の周囲の筋肉を強くすること
(2) 
  消炎鎮痛剤、湿布、塗り薬
(3) 関節注射
  ヒアルロン酸
(4) リハビリテーション
  温熱療法、体操療法
(5) 装具療法
  サポーター、足底板
(6) 手術
  人工関節等
これらの治療法の中でも体操療法が特に大切で、膝周囲の筋肉を強くする方法を具体的に説明した。
 日常生活の注意点
 膝に負担をかけない階段昇降の方法、畳の生活での注意点等を説明した。

 参加していただいた方からの活発な質問があった。ヒアルロン酸注射の効果、サプリメントに関すること、サポーター等装具に関することが多かった。今回は参加者が多く大変活気があり、良かったと思う。

 動悸を感じたら
 危険な不整脈、心配のない不整脈
吉村内科 野間 健司
スライドはこちら環境によっては時間がかかることがありますのでご了承ください。 
 動悸とは「心臓の打ち方が速くなったり遅くなったり、不規則になった場合に感じる違和感ないし不快感」と定義される。これは健常な人でも、日常しばしば感じることがある。激しい運動中では非常に脈が速くなり、また人前で過度に緊張した場合にも、ドキドキして動悸を感じる。健康診断でよく指摘されるものに、上室性ないし心室性期外収縮がある。これらは脈が乱れるため、動悸として自覚される。不整脈は起こる場所により、いくつかに分類される。心房を中心に起こるもの、心室を中心に起こるもの、心房心室にまたがって起こるものなどである。それらは心電図をとることで、波形の特徴からほとんど診断可能である。不整脈は頻回に起こるもの、時々起こるもの、ごくたまにしか起こらないものなどがあり、様々である。そのため問診が非常に大切である。動悸の起こりかた、止まりかた、頻度など、その特徴を聞き大体これだろうと当たりをつけて、診察、検査をすれば、多くの不整脈が診断可能である。その時には通常の心電図に加えて、圧縮波形で3分間とることで期外収縮をとらえることができる。3分間心電図でとらえられない場合は、24時間のHolter心電図が有効である。正常の心拍数は24時間で10万から12万なので、発生頻度の少い不整脈も診断可能である。さらに不整脈自体の重症度が判定できる。心エコーは心機能をみる上で重要である。心機能の悪い心臓におこる不整脈は心機能を悪化させ、悪化した心臓はさらに不整脈を増悪させる。
 不整脈の中で、洞性不整脈、右脚ブロック、上室性期外収縮などはあまり悪さをしないので、それほど心配はない。心室性期外収縮も心機能の保たれている心臓で、出現頻度も少なければそれほど危険はない。生命予後を脅かすもっとも危険なものは、心室頻拍、心室細動であり、即刻処置が必要である。また徐脈の中で、房室ブロックではしばしば突然死がみられ、危険である。発作性心房粗動は心拍数が保たれていればそれほどでもないが、2:1もしくは1:1伝導をすると非常に速い心拍となり危険である。心房細動も安定しているものはそれほど危険でないが、心機能の悪い心臓では心不全を増悪させるので注意が必要である。また合併症として脳梗塞がみられるが、心房内の大きな血栓が脳にとぶので、太い血管がつまり半身麻痺をおこし、時に死亡する。洞不全症候群は失神を起こすが、突然死は少ない。
 危険な不整脈と診断されたものは要治療である。それほど危険がないものでも、動悸、不快感など自覚症状の強いものも治療の対象となる。発作性心房細動は、たまにおこると自覚症状が強い。逆に慢性になると不整に慣れてくるので、症状がなくなることが多い。
 薬物療法として安定剤、β遮断薬に加えて抗不整脈薬が使われるが、抗不整脈薬は副作用の強いものが多いので、必要なときに必要なだけ使用し、だらだらと使わないことが大切である。最近、非薬物療法としてのカテーテルアブレーションが注目されている。WPW症候群に伴う発作性上室性頻拍は、もっとも良い適応でほぼ100%の治癒率である。.生活習慣の改善も大切でアルコールは発作性心房細動の誘因のひとつである。
 不整脈はポックリ逝く危険なものもあるが、心配のないものも多いので必要以上にこわがることはない。きちんと診断してフォローされていれば、まず心配はない。不整脈を理解して、必要な場合には適切な治療を受けて、いい人生をおくりましょう。
 スライドはこちら 環境によっては時間がかかることがありますのでご了承ください。
 

平成21年度AED(自動体外式除細動器)講習会開催について
   最近では、一般の方にも、AEDが普及し、使用許可されるようになりました。ここ数年をみましても、愛知万博、東京マラソン、学校内事故(クラブ活動中に起こる不慮の心停止事故)、家庭内事故(夜間に家族に生じた心肺停止事故)などで、実際にAEDを使用し救命し得た事例も増えております。江東区民の方々にも、一度は経験して頂きたいと考え、江東区医師会が主催で、心肺蘇生法及びAEDの講習会を開催いたします。
終了致しました
 参加された方々は20代~70代まで幅広い年齢層でありましたが、一人一人が熱心に、意欲的に講習、実技に取り組まれ、最初はぎこちない様子で、恐々と行っていた方も、最後には自信をもった顔つきに変わって心肺蘇生法、AEDを繰り返し練習されておりました。 
 開催当日の模様をビデオでご覧いただけます。

薬の効かないアタマジラミを作らないために・・
地域で出来ること
 以下は2009年5月23日に開催された区民公開講座でお話された内容を岡田先生にまとめて頂きました。
江東区医師会皮膚科医会 副代表 岡田善胤
 今回の区民講座は、新型インフルエンザの流行が報道されるなか、多くの方にお集まりいただき、誠にありがとうございました。当日の講演要旨を記載いたします。
 子供さん達が、安心して暮らせるように、大人が連携しなければなりません。よろしく御協力ください。以下に江東区学校保健会健康推進委員会の作成した「アタマジラミ対策」のフローチャートをお示ししますので、参考にしていただければ幸いです。
 
1. 発見・連絡
 早期発見・早期治療が治療上最も大切です。
 アタマジラミがいるかもしれないと思って頭を観察してください。
 疑わしい時は皮膚科医に御相談ください。不潔だから感染したのではありません。
 一斉検診・一斉治療が大切です。(一斉検診は犯人探しではありません。)
 アタマジラミの感染の拡大を最小限にするための方法なので御協力ください。
 感染した子供さん全てが被災者ですから。
2. 対応策
感染の予防・防止のマニュアルが必要ですが、現在のところマニュアルはありません。またフローチャートの「必要に応じて」の必要の内容が不明瞭なので、今後は明確にしてゆく必要があります。
 現在は、治療・予防に関して学校と個人に任されている状態です。
 今後実用性のあるマニュアルを作成に努める所存ですので御協力ください。
 そして正しく治療してください。
 スミスリンシャンプーを使用される時は、5分間シャンプーを髪になじませてください。(是非大人の方がやってあげてください。)
 れが薬剤抵抗性シラミを作らないためのキーポイントです。
 地肌から6mm以内の卵は、生きています。(毛の根元に産卵するため)
 治癒の証明のために、卵の殻もクシ等を使って全て取り除いてください。
 学校医・園医への連絡は、必ず速やかに行ってください。
3. 一例でも発生したら「保健便り」を発行してください。
 知らないうちに感染している病気です。注意喚起の意味でも一例でも発生したら「保健便り」の発行を是非お願いします。不潔とは無関係な病気です。頭が触れただけでシラミが飛び移ってきます。決してイジメに繋がらないよう、普段から啓発・教育が大切です。
4. 経過報告
 治療中も登校を禁止する必要はありません。池袋保健所のホームページを参考に駆除を行い、治癒を確認後学校に連絡してください。
集団感染
 誰が、どのように判断するのでしょうか?情報がないのに判断はできません。一斉検診が必要です。そして、シラミが一つの施設で留まることは稀です。兄弟間やスポーツ教室等でもうつってくるので、地域で(学校・保育園・幼稚園・学童クラブ・プールや体操教室等)発生状況を共有することが重要です。
 現在は、シラミが発生しているか否かを知る方法もありませんし、情報を管理している所もありません。教育委員会・保健所・医師会(学校医)・PTAの連携が必要です。是非、御協力ください。
 すべては地域の子供達のためです。
 大人が職域を超えて連携し、こどもをシラミから守りましょう。